中国雲貴高原のヒエ類とくに非脱粒性タイヌビエの存在

概要

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タイヌビエEchinochlou oryzicola Vasing.(=E. phyllopogon Stapf)は, 水稲栽培における主要な雑草の一つであり, おもに温帯の水田にみられる。タイヌビエは, 染色体数2n=36とする4倍体であり, 6倍体(2n=54)のイヌビエ(広義)E. crus-galli Beauv. とは種を異にするが^<7)>, 多型的な種であるイヌビエのうちではヒメタイヌビエE. crus-galli var. formosensis Ohwi と形態的に類似し, 相互の識別が困難である。ヒエ類の分類ではこのような類似種の存在に加えて, 実態把握の進展を伴わない学名操作も重なって混乱が回避されていない。この混乱を整理するには, 雑草ヒエ(ノビエ)の分類や分布に関する知見の蓄積が必要である。しかし, 東アジアではとりわけ中国における実態の把握が遅れており, 分類学的再検討の上で障害となっている。著者らは1992年より毎年中国東南部における植物利用と民族文化の相互関係の観察と調査を進めているが, ノビエの呼称識別とタイヌビエの分布と分類に関する新知見を得たので報告する。なお, 分類は藪野の方式^<7)>に従っている。
1996-08-26