老令牛卵巣の組織学的研究
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概要
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3例の老令牛(28年, 21年, 17年)の卵巣を組織学的に研究し, それらに共通する組織学的形質を認めた. 供試前におけるこれらの動物の性的症状に関する臨床的観察が不完全なものもあったため, 組織学的所見の意義を充分に考察することはできなかった. 正常な発育卵胞または原始卵胞は, いずれの卵巣にも見いだされない. 3例中で最も若い動物において, 卵胞の輪郭を示すものが少数認められたが, 卵細胞は変性しており, かつ卵胞は閉鎖過程を示していた. このことから, 17年以上の牛では, 卵細胞はほとんど消失しているものと考えられる. 卵胞の消失に伴い, 卵巣は本質的には支質性組織のみから成る. とくに最高令牛の卵巣では, この傾向が強く, ほとんど完全な線維体の様相が示されていた. 3例中2例において, それぞれ一側の卵巣に嚢腫の発育が認められた. 最高令牛の嚢腫腔には, 白色ゼリー状物質が, また17才牛のそれには, 無色の液体が満たされていた. これらの嚢腫が, ホルモン活性を有していたかどうかは不明である. 全例の卵巣において,卵胞様構造が両側性に認められた. 卵胞様構造の個々の大きさと発現の頻度は, 本報告の3例においては, 高令のものほど, いずれも大であるように思われる. 本報告に記載された卵胞様構造は, 梁柱の発達形式に従い, 2型に分類され, その一つは顆粒細胞腫, 他は嚢胞腺腫と見なされる. 比較的大形の顆粒細胞腫には, 大小のコロイド小体がきわめて多数認められる. この小体は, コロイドの累積によって, 形が増大して行くように思われる. 組織科学的検索の結果, この小体は脂質をも含む一種の多糖類であることが明らかにされた. コロイド小体は, 梁柱組織中に確実に位置して見いだされる. 顆粒細胞腫には, もう一つの特徴的形質, すなわち花冠様構造が認められる. この場合の花冠様構造の多くのものは, 梁柱の横断面であることが明らかにされた. 従って, このものは, 本来の Call-Exner 小体とは, 本質において明らかに区別されるべきものと考えられる. 一方, 本来の Call-Exner 小体と認められるものをもつ卵胞様構造もまた存在する.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 1963-10-25
著者
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