牛胎盤における栄養膜の赤血球貪食作用
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概要
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牛の妊娠76日には絨毛膜絨毛基部と小丘中隔との間に微小な〓血点が現われ, 満期に向かって数と大きさが増加し, 150日以後血腫hematomaとなった。弓状帯arcade zoneに対面する中隔組織の上皮層は大量の脂質小滴を含み, 退行性変化の徴候を示したが, これらの変性産物は組織栄養素として栄養膜上皮に吸収されるものと思われた。また, 血腫に対面する栄養膜は妊娠の進行とともに〓血血球の貧食作用を示した。弓状帯に並ぶ栄養膜細胞は高円柱形で, 強力な食作用に好適な発達した小器官と微絨毛をもっていた。酸性フォスファターゼ活性は弓状帯の栄養膜細胞にのみ検出された。赤血球のとり込みと消化の過程は, これまでに報告されている他の胎盤型, ならびに羊のそれとほとんど同様であった。栄養膜の基底部に特によく発達した細胞間隙は消化した物質の輸送路として重要な運河であるようにみえた。赤血球貧食中の栄養膜はしばしば間葉中に反転, 後退し, その上皮細胞は大量の血液原性の色素を細胞基底に保有した。このような栄養膜の出現は, 赤血球の細胞内消化がかなりの時間を要する作業であることを示唆した。
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 1986-02-15
著者
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