トールフェスク(Festuca arundinacea Schreb.)における組織構造および引きちぎり抵抗性指数に及ぼす環境の影響
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概要
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寒地型イネ科牧草は, 夏期に高温および乾燥の影響によりその飼料品質が著しく低下する。そのため, その改善が重要な育種目標であるのにかかわらず, 育種現場では採種や収量調査の作業と重なり, 飼料品質の評価まで手がまわらないのが現状である。著者は葉組織構造と物理的強度を指標にして選抜することによりトールフェスクの飼料品質を改善できる可能性をこれまでに示した。本研究では, これらを指標による効率的な選抜手法を確立するために, 葉組織構造の維管束鞘延長部の出現頻度および葉の引きちぎり抵抗指数による評価を冬と夏および人工環境下で実施し, その生育環境の違いが葉の組織や物理的強度に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 1.トールフェスク品種「ナンリョウ」および「ホクリョウ」を供試し, 冬期に西那須野の温室で栽培させた個体について維管束鞘延長部の出現頻度を観察し, 両端の値を示した数個体を, 夏期に札幌の圃場で栽培したところ, 「ナンリョウ」ではグループ間で有意性が認められたが, 「ホクリョウ」では両グループとも「ナンリョウ」と同程度の出現頻度で両グループ間に差異が認められなかった。 2.トールフェスク品種「ナンリョウ」および「ホクリョウ」を4月から10月まで人工気象室(昼温, 24℃, 夜温, 20℃, 自然日長)内で栽培し, 経時的に葉幅を考慮した引きちぎり抵抗値を調査した。6月データで高い値と低い値を示した数個体を各品種から選抜して, その維管束鞘延長部の出現頻度を10月に調査したところ, 「ナンリョウ」では両者間で有意性に差異が認められたが, 「ホクリョウ」では差異が認められなかった。 以上のことより, 「ナンリョウ」のように秋期休眠性の低い育種素材は夏期以外の冬期等に葉組織構造と物理的強度を指標として飼料品質に関する選抜が可能であるが, 「ホクリョウ」のように秋期休眠性の高い育種素材については自然日長条件下で栽培した場合, 秋から冬期にかけて選抜は不可能であるが, 春夏期であれば選抜できることが明らかになった。
- 日本草地学会の論文
- 2003-12-15
著者
-
山田 敏彦
北海道大学北方生物圏フィールド科学センター生物資源創成領域
-
山田 敏彦
北海道農業試験場
-
高井 智之
(現)長野県畜産試験場
-
高井 智之
北海道農業研究センター
-
山田 敏彦
北海道農業研究センター
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