八重山群島の蚊科に関する研究 : 7. クロフトオヤブカの交尾習性
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概要
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西表島特産のクロフトオヤブカの特殊化した交尾習性について主として室内で観察し, 連続写真を付して説明した。多くの蚊の雄では触角毛は雌に比べて顕著で, 交尾は幼虫時の生息水域から一度分散した後, 雄が再びある特定の場所に集合して作る蚊柱(swarm)内で行われる場合が多い。クロフトオヤブカの雄の触角毛は雌よりは毛深いが著しい差はない。雄は蚊柱を作る習性はなく, 幼虫発生水域に羽化後もしばらくとどまり, 7∿10時間後には成熟し, 水面すれすれに旋回した。手あたりしだい水面の浮遊物に触れ, 羽化中の雌と接触すると交尾欲は一層高まり, 旋回は活発になるように思われた。雄は普通羽化直後の水面で静止している雌の背中に乗り, 直ちに前方に移って逆立ちし, 雌の体の下側にもぐり込み, 雌の体を持ち上げるようにして下から生殖器を交接した。この雌雄は生殖器を連結させたまま水面に普通30分, 長い時は3時間静止した。やがて雌は体が黒色になり成熟すると雄を引きずるようにして水面から岸辺にはい上がった。この間, 旋回する別の雄がこのペアーに向かって何回も交尾を仕掛け, 時には水面で数個体の雄が団子のように絡み付いたが連結は離れなかった。その後, 雌は後肢で雄をけりつけ, 生殖器の連結は分離し, 交尾は完了した。充分交尾した雌は雄を二度と寄せつけなかった。このような実験室内の一連の交尾行動から判断して本種の交尾にはある種の性誘引フェロモンが関与していると思われるが, 今後の研究に待ちたい。
- 1981-12-15
著者
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