クロゴキブリ潜伏個体同士の相互作用
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概要
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クロゴキブリの潜伏空間の好みと, それに影響する個体間の相互作用を実験的に調べた。潜伏用のシェルターは白色の厚紙製の筒で, 一般用に長さ12cm, 両端の開口部4cm×高さ(高さは0.5cm, 1cm, 2cmおよび4cm), また若い幼虫用には長さ3cm, 開口部2cm×高さ(0.5cmおよび1cm)のものを用いた。実験ではテスト容器中に3種または2種のシェルターを並べておき25℃24時間後にその中のどれにゴキブリが潜伏したかを調べた。結果は次の通りである。1.成虫 : 単独成虫の選好反応ではシェルターの高さを1cm>2cm>4cm》0.5cmの順位で好むことがわかった。0.5cm. 1cm. 2cmのシェルター組合せであらかじめ乾燥標本を1cmシェルターに入れておいても, 生きた単独成虫はそれを避けることなく1cmのシェルターを選好した。しかし生きた成虫2頭の反応では, 通常同居を避けてそれぞれが1cmと2cmのシェルターに分かれて入った。これら3個うち1個のシェルターをゴキブリの排泄物や臭いで条件づけるとその中に同居する場合が若干生じたが, なお大部分のゴキブリは条件づけに関係なく2個のシェルターに分かれて入った。1cmと0.5cm, または1cmと4cmの組合せでは1cmのシェルターに2頭が共存する場合がかなり生じた。3種のシェルターに16頭の成虫を用いると1cmと2cmのシェルター内に数頭ずつが同居したが, 0.5cmのシェルターにはほとんど入らなかった。2.老令幼虫 : 成虫同様にして単独の6令および7令幼虫にシェルターを選好させると, その高さを0.5cm>1cm>2cmの順で好むことがわかった。2頭同時の反応では0.5cmと1cmのシェルターに分かれる場合が多かった。6∿8令の混合幼虫を16頭同時に入れると3種のシェルターに数頭ずつ入った。3.若い幼虫 : 成虫とは異る装置とシェルターでテストしたが, 単独の3令および5令幼虫は1cmシェルターよりも0.5cmシェルターを強く好んだ。しかし1令幼虫はどちらのシェルターにも同じように入った。2頭同時にテストすると3令および5令期には2個のシェルターに分かれる傾向が強い。しかし1令期はむしろどちらか一方のシェルターに2頭が接近し合って同居する傾向が極めて明らかであった。一方, 成虫と同じ装置で100頭の1令幼虫を同時にテストすると, シェルターに入る個体は少なく, 外で集合するものが多かった。4.以上から, クロゴキブリ成虫同士は互に排他的であり, 同居または集合状態は最適潜伏空間が限定されたときみられるものと思われる。この場合ゴキブリ自身による潜伏場所の条件づけは互の排他性を若干弱めるが, その作用は強力ではないようである。また少なくとも3令以上の幼虫は成虫と類似の性質をもっているとみられる。他方, 1令幼虫は明らかに互に接近し合って集合する性質が強いといえる。
- 日本衛生動物学会の論文
- 1973-07-15
著者
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