ゴキブリ 4 種の生存と発育に対する冷温の影響
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本邦中部で越冬する能力を調べるために, 27℃または20℃で飼育したチャバネ, ワモン, クロ, ヤマトの4種のゴキブリを, 冬の平均気温に類似させた5.5℃条件下で長期間冷蔵する実験を行なった。またあらかじめ15℃に保ちその後5.5℃に移すことも試みた。チャバネゴキブリとワモンゴキブリの卵鞘は20日間の冷蔵で死亡し, 40日の15℃予備飼育さえも有害であった。幼虫や成虫では15℃予備飼育は冷蔵に対する耐性を高めた。しかし最も耐性のある終令幼虫と成虫に予備飼育期間28日を与えても30日間の冷蔵で死亡し, 予備飼育100日間でも40日間の冷蔵に耐えられなかった。また20℃で増殖を阻止されているチャバネゴキブリ成虫および発育の遅延しているワモンゴキブリの終令幼虫は, 共に40日間の冷蔵によって死亡した。したがって, これらの種が本邦中部の戸外や無加温の建物の中で3カ月にわたる冬を越えることはきわめて困難と思われる。クロゴキブリでは, 一定期間の予備飼育がすべてのステージの冷蔵に対する耐性を高めた。すなわち, 予備飼育28日間でかなりの老令幼虫が90日間の冷蔵に耐え, 約半数の卵鞘が予備飼育40日間で冷蔵80日間に耐えた。しかし成虫と若令幼虫は60日以下しか耐えられなかった。同様にヤマトゴキブリでは, 予備飼育28日間ですべての令期のほとんどすべての幼虫が120日間の冷蔵に耐え, 成虫でも90日の冷蔵に耐えた。卵鞘は予備飼育40日間のあとでも冷蔵40日で死亡した。この種では老令幼虫と成虫は予備飼育なしでも90日間の冷蔵に耐えた。ゴキブリのひそむ場所の冬の最高最低温度は平均温度とそれほどかけはなれたものとは考えられないので, これらの結果はクロゴキブリとヤマトゴキブリが本邦中部の戸外および無加温の建物の中で越冬できることを示しているといえよう。ヤマトゴキブリの2令と終令にみられる特異的な発育遅延は冷蔵によって消去され, 休眠の特性を示した。クロゴキブリの2令でも20℃で休眠様の発育遅延があるが, その幼虫を直接冷蔵した場合60日間で全部死亡した。しかし予備飼育を経過させた場合については未調査である。
- 日本衛生動物学会の論文
著者
関連論文
- 2 ゴキブリ被害の認識にみられる変遷(衛生害虫防除の現状と問題,第4回日本衛生動物学会西日本支部例会講演要旨)
- 基調講演.工場等における衛生害虫,産業害虫とIPM(第64回日本衛生動物学会西日本支部大会講演要旨)
- 桐谷圭治・湯川淳一編, 「地球温暖化と昆虫」, 発行所:全国農村教育協会, A5版, 346ページ, 定価=本体価格4,500円+税
- 桐谷圭治・田付貞洋編, 「ニカメイガ」(副題,日本の応用昆虫学), 執筆者:江村薫・菅野絃男・岸野賢一・桐谷圭治・後藤三千代・小山重郎・近藤章・昆野安彦・田付貞洋・積木久明・平野千里・廣瀬義躬・森本信生・八木繁美, 発行所:東京大学出版会, A5版, 290ページ, 本体価格7000円+税
- 実地のゴキブリ捕獲指数に及ぼす調査用粘着トラップ数の影響
- コクヌストモドキ成虫の日周活動と歩行移動の実験的観察
- (5)ゴキブリ対策と研究知見(シンポジウム「21世紀の家屋害虫」,日本家屋害虫学会第30回大会発表要旨)
- パラジクロロベンゼンのノシメマダラメイガに対する幼虫侵入防止効果および成虫産卵防止効果
- 29 漁港周辺におけるドブネズミ調査
- 侵入した飛翔性微小昆虫の室内粘着UVライトトラップへの反応
- 知って駆除する!!飲食店のワル虫たち--ゴキブリ、ハエ、ネズミ
- 誘引食毒剤によるチャバネゴキブリ防除のモデルと実際(第 21 回大会講演要旨)
- S1 ゴキブリ用ベイト剤の基礎と最近の問題点(殺虫剤研究班)
- 木酢液に対するチャバネゴキブリの忌避性
- 14 薬剤及び処理範囲とゴキブリ防除効果の関係
- クロゴキブリの自発飛翔
- B31 ある一般家庭におけるクロゴキブリの発生調査 (その 2)
- A34 ある一般家庭におけるクロゴキブリの発生調査 (その 1)
- 昆虫死体のカタラーゼ活性簡易チェック法の基礎検討-その2-
- UVライトトラップによるタバコシバンムシ成虫の捕獲効率
- ネアカカツオブシムシ(Dermestes carnivorus F.)の実験室内における産卵と耐寒性
- チャバネゴキブリ成虫の新潜伏場所への移動 : (第 3 報)雌雄間の相互干渉
- ジンサンシバンムシの生育と粉餌層の厚さとの関係
- チャバネゴキブリ成虫の新潜伏場所への移動(第 2 報) : 餌と水の存在位置の影響
- チャバネゴキブリ成虫の新潜伏場所への移動(第 1 報) : シェルター間の移動に対する個体数密度の影響
- コクヌストモドキの餌内外の分布
- チャバネゴキブリ個体群の動態におよぼす特定グループ定期的除去の影響
- チャバネゴキブリに対するベイト剤の効力比較試験
- 無毒餌の存在が毒餌のチャバネゴキブリ防除効果に及ぼす影響
- 15 チャバネゴキブリ雌雄成虫の潜伏と移動
- B-31 チャバネゴキブリ潜伏場所周囲の薬剤処理効果の実験的検討 : 第 3 報
- 87 薬剤および処理範囲とゴキブリ防除効果の関係
- 浸透性殺虫剤の簡易試験法のためのキビクビレアブラムシの利用〔英文〕
- 20 新合成ピレスロイドの生物活性 (第 3 報) : 噴霧および加熱蒸散試験等による殺虫活性
- 19 新合成ピレスロイドの生物活性 (第 2 報) : 微量滴下法等による害虫別殺虫効力および協力剤の効果
- 18 新合成ピレスロイドの生物活性 (第 1 報) : 合成ピレスロイドの殺虫活性とくに 3-(7-methyl-2, 3-dihydrobenzofuryl) chrysanthemate について
- 飛翔性小型昆虫が室内に侵入する条件に関する実験 : 給気用(陽圧型)換気扇の防虫効果
- 36 ニワトリヌカカに対する Chlorpyrifos-methyl の効力について
- 33 下水処理施設でのユスリカ幼虫駆除薬と適用方法
- 32 下水処理場における C. yoshimatsui 幼虫の大量発生と基礎殺虫試験
- ゴキブリ 3 種の潜伏行動
- クロゴキブリ潜伏個体同士の相互作用
- 36 ゴキブリ 3 種の潜伏行動
- ゴキブリ 4 種の生存と発育に対する冷温の影響
- ゴキブリ 4 種の発育と増殖の遅延, 特に温度の影響について
- ワモンゴキブリの親世代の飼育密度, 産卵時の親の老若, および卵期の環境湿度が, ふ化幼虫の体重と殺虫剤感受性に及ぼす影響
- 17 ワモンゴキブリの親の飼育密度と子供の性質との関係
- 48 クロゴキブリ成虫同志の排他性
- ゴキブリ 3 種の越冬に関する実験的研究(第 23 回大会講演要旨)
- 試験用昆虫としてのワモンゴキブリ 1 齢幼虫の利用
- 202 ワモンゴキブリ幼虫による改良ドライフィルム殺虫試験法(昆虫毒物学, 昭和43年度日本農学会大会分科会)
- 昆虫死体のカタラーゼ簡易検査法基礎データの追加 : 飛来侵入昆虫その他における反応
- 39 ヒメイエバエ幼虫休眠の 2・3 の特性について
- 34 ヒメイエバエの竹の子抽出物による誘引試験 2 : 京都と青森での養鶏場内実験
- 33 ヒメイエバエの竹の子抽出物による誘引試験 1 : 室内実験
- 88 自動噴霧装置による開放鶏舎のニワトリヌカカ防除法(第 1 報)
- 96 Diflubenzuron によるチャバネゴキブリ駆除実地試験成績その 2
- 24 Diflubenzuron によるゴキブリ実地駆除試験成績
- 黒い半野外性ゴキブリの性質と対策
- パラジクロロベンゼンによる各種昆虫の殺虫効果試験
- A-55 ゴキブリ類の生活史と休眠(衛生昆虫の休眠と移動)
- 2 モデルルームにおけるクロゴキブリの休息場所
- 98 非天然アルドペントース 4 種等のゴキブリに対する摂食行動誘起作用
- 5 ゴキブリに対するジフルベンズロンの殺虫効果
- チャバネゴキブリ成虫に対する各種殺虫剤の摂食阻害作用
- 温度によるゴキブリ 4 種の潜伏行動の変化
- 87 温度によるゴキブリ 4 種の潜伏行動の変化
- キョウトゴキブリ越冬幼虫における齢構成の2極化
- (6)UVライトトラップ条件下でのコクヌストモドキ成虫の飛翔方向(一般講演,日本家屋害虫学会第30回大会発表要旨)
- (5)コクヌストモドキ成虫のタワー先端からの飛び出し方向と着陸成虫の歩行方向(一般講演,日本家屋害虫学会第30回大会発表要旨)
- 桐谷圭治・田付貞洋編, 「ニカメイガ」(副題,日本の応用昆虫学), 執筆者:江村薫・菅野絃男・岸野賢一・桐谷圭治・後藤三千代・小山重郎・近藤章・昆野安彦・田付貞洋・積木久明・平野千里・廣瀬義躬・森本信生・八木繁美, 発行所:東京大学出版会, A5判, 290ページ, 本体価格7,000円+税
- コクヌストモドキ成虫の飛翔条件
- (4)コクヌストモドキの高所侵入と飛翔条件との関係(一般講演,日本家屋害虫学会第28回大会研究発表要旨)
- (2)UVライトトラップによるタバコシバンムシ成虫の捕獲効率(一般講演,日本家屋害虫学会第28回大会研究発表要旨)
- ゴキブリについて (特集 衛生動物今昔物語)
- ゴキブリの生活史と行動に関する研究 : 特に越冬休眠、潜伏と摂食について
- 330 炭水化物に対するゴキブリ3種の攝食反応比較(昭和40年度日本農学会大会分科会)
- ヤマトゴキブリ自然越冬個体群のステージ構成
- 餌の量に支配されるチャバネゴキブリ現存量の平衡と幼虫率およびトラップに対する個体の反応
- 3 都市化とゴキブリの適応
- モモアカアブラムシの色彩 2 型の発生消長と殺虫剤感受性について
- タマナヤガ終令幼虫の潜土行動に対するいくつかの要因の影響
- 殺虫剤抵抗性ツマグロヨコバイに対するホルモチオンとMTMCとの共力作用
- 殺虫剤 20 種のくん蒸剤と非くん蒸剤へのグループ分け
- ヨトウガ, ハスモンヨトウ終令幼虫の食草間の移動に関する実験
- 耐低温性に関連したクロゴキブリの発育
- 303 ヨトウガ,ハスモンヨトウ終令幼虫の食草間の移動に関する実験(一般講演)
- タマナヤガ, ヨトウガ, ハスモンヨトウの幼虫の行動と地表面施用の食毒剤の効力に関する実験
- 12 クロゴキブリ幼虫の耐低温性と休眠性との関係
- タマナヤガ,ヨトウガ,ハスモンヨトウの幼虫の行動と地表面施用の食毒剤の効力に関する実験(一般講演)
- 5 ゴキブリ防除研究の方向づけ
- タマナヤガ, ヨトウガ, ハスモンヨトウの幼虫の昼間の生息場所に関する実験
- 147 タマナヤガ,カブラヤガ,ヨトウガ,ハスモンヨトウ各幼虫の昼間の居住場所
- タバコシバンムシに関する最近の知見
- 食品・医薬品工場における飛翔性昆虫の問題点
- 微小飛来昆虫の屋内侵入に関する屋内気圧の追加測定
- ゴキブリ類に対するグリセロールおよび関連物質の摂食行動誘起作用(第 22 回大会講演要旨)
- 桐谷圭治・湯川淳一編, 「地球温暖化と昆虫」, 発行所:全国農村教育協会, A5版, 346ページ, 定価=本体価格4,500円+税
- (5)風向と香気に対するコクヌストモドキ成虫の飛翔反応(一般講演,日本家屋害虫学会第31回年次大会発表要旨)
- 215 いくつかの脂肪酸及びその関連物質のゴキブリ誘引作用と摂食行動誘起作用(生理学, 昭和41年度日本農学会大会分科会)