広範性脳損傷におけるmagnetic susceptibility artifactの検出とその病的意義

概要

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頭部外傷の病理学的変化を動的, かつ明確に捉えることを目的に, 著者らの施行しているMRI trauma studyのうち, 広範性脳損傷における大脳白質や基底核, 脳梁, 脳幹などのT2強調画像で高信号域として抽出される病変(T2高信号病変)に焦点を絞り, 特に出血の有無を検討し, その病的意義を考察した.対象はMarshallらのCT分類でdiffuse injury I, IIに相当する広範性脳損傷29例である.MRIで脳実質に異常所見のみられなかった症例は3例のみであった.急性期に検索を施行した19例中16例にT2高信号病変がみられた.これらに除外項目を加えたうえで, 脳幹部, 脳梁部, 他のテント上病変に分け, EPI T2^*強調画像で抽出されたsusceptibility artifactの陽性率をみると, それぞれ56%, 69%, 91%, であった.このうち, follow-up studyを施行した9例と, 慢性期に検索を行った10例のT2高信号病変をみると, FLAIRでは描出されず, EPI T2^*強調画像でsusceptibility artifactの残存が確認できた.CT所見, 患者背景を考慮すると, これらのsusceptibility artifactはきわめて少量の出血を示唆し, 従来, 軽症, 中等症の広範性脳損傷のMRIにおいて浮腫や虚血病変と考えられてきた小病変の多くはmicrohemorrhageを伴う浮腫と考えられた.
日本脳神経外科コングレスの論文
1998-07-20