北太平洋亜寒帯域における細菌プランクトンの現存量と生産の地理的分布 : 1997年夏季の観測結果から
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概要
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1997年7月から9月にかけて,北太平洋亜寒帯域およびべーリング海の表層(0〜100m)と中層(100〜1,000m)において,細菌現存量と生産速度を測定した。亜寒帯環流の内側(西部,べーリング海,アラスカ湾)および環流の南側に位置する境界海域に観測点を設け,鉛直分布を調査した結果,表層(0〜100m)における細菌プランクトンの現存量と生産は,西部環流およびベーリング環流の内側において高く,東部海域に行くに従い低下するという傾向が見られた。この地理的分布パターンは,観測期間における植物プランクトン現存量の分布パターンとおおむね一致した。細菌生産は,クロロフィルa濃度(r^2=0.340,n=60,P<0.0001)および緩分解性有機炭素濃度(SL-TOC)(r^2=0.488,n=59,P<0.0001)と有意な正の相関を示した(ただし,SL_TOCは,任意深度の全有機炭素濃度から,1,000mの深さにおける全有機炭素濃度を差し引いたものとして定義した)。水温とクロロフィルa濃度を独立変数として重回帰分析を行った結果,細菌生産速度の変動の60%は,水温とクロロフィルa濃度により説明できることが明らかになった。この結果は,亜寒帯海域の表層水中では,細菌の増殖が,水温と溶存有機炭素の供給という二つの因子による強い支配を受けているという仮説を支持する。一方,中層においては,細菌生産の地理的分布パターンが,表層における植物プランクトンの分布パターンと大きく異なった。すなわち,表層における植物プランクトン現存量の最小値が観測された境界海域(環流の南側)において,細菌プランクトンの生産は最大値を示したのである。細菌生産はSL-TOCと強い正の相関を示したことから(r^2=0.753,n=75,P<0.0001),細菌増殖が有機炭素の供給により強く制限されていることが推測された。北太平洋亜寒帯域において,表層の植物プランクトンの地理的分布パターンと,中層での細菌生産のそれが大きく異なるという今回の観測結果は,同海域において,沈降粒子フラックスと,中層における易分解性溶存有機炭素の供給フラックスとが,脱共役している可能性を示唆する。
- 日本海洋学会の論文
- 2002-03-05
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