没入型提示装置を利用した周辺視野検査システム

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人間の視覚は,中心部における解像度(視力)を中心にとらえられがちだが,日常生活・運転などにおいては周辺視野が重要な役割をはたしている.視野障害のある就学前の幼児は自身の視野が狭いことがわからず,周囲の人間もこれに気づかない場合が多い.また,高齢者や緑内障の患者は視野が徐々に狭くなる場合が多いため,視野の経時的変化を観察することは診断において重要である.現在の周辺視野測定検査は,被検者は正面に提示された固視点を注視した状態で,周辺に提示された視標が見えるかどうかを回答する自覚検査である.しかし就学前の幼児や高齢者においては,教示の理解や集中力の持続が困難なために注視点を見続けることができない場合が多く,従来の検査装置では視野範囲を計測することができない.これらの問題点を排除するために,本研究では教示が不要で被験者からの自主的な回答を必要とせず,現実に近い環境下で視野範囲を測定する簡便な検査装置を提案・開発する.今回開発した視野検査装置は,自然視の状況下においても視野をカバーするために,約3m×3mのスクリーン3面(前と左右)と約3m×1mのスクリーン1面(下)からなる没入型提示装置を用いた.本検査装置では固視点の代わりに被験者の注意を引く映像を提示した.また,周辺視野の範囲を測定するために表示する視標は明度,彩度,色相,大きさ,提示時間などのパラメータをコントロールできる.被験者が視標を認識したかどうかは,視線や頭部の移動をCCDカメラで観察することで判定する.今回作成した視野計測システムがスクリーニング検査装置として従来の装置と矛盾の無い結果を得ることができることを健常成人被験者に対する実験で確認した.また,幼児に対する実験によって本検査装置の実用可能性を示した.
社団法人電子情報通信学会の論文
2002-10-11

没入型提示装置を利用した周辺視野検査システム

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