合着用セメント表面のpH測定 : III. リン酸亜鉛セメントのpH変化と硬化反応

概要

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市販のリン酸亜鉛セメント粉末と液に種々の添加物を加えた場合のpH変化をフラット型pH電極法により測定した。CaOとCa(OH)_2の市販セメント粉末への添加物は,セメント表面に接する水の中和速度を増加させた。またMgOとMg(OH)_2の添加物はセメントの初期のpH値を増加させた。一方,その他の無機物(CaF_2, Ca_<10>(PO_4)_6・(OH)_2, Zn(OH)_2, Al(OH)_3)および有機物(パラホルムアルデヒド,アルブミン,L-アスコルビン酸,タンニン酸,コラーゲン)の添加の影響はほとんど見られなかった。また,正リン酸へのAlイオンの添加は,無添加の場合に比べ接触する液の中和を防げた。DSC,X線回折,赤外分光分析の結果から判断すると,Alイオンの添加によって硬化体中には第3リン酸亜鉛結晶(ホーパイト)ではなく,非晶質のりん酸塩化合物が生成されたものと考えられる。すなわち,AlイオンによりZnOとリン酸との反応が抑制され,未反応のリン酸がセメント表面に接している水に連続的に溶出してくるため,中和を妨げる結果をもたらしたものと推察される。
日本歯科理工学会の論文
1986-12-25