合着用セメント表面のpH測定 : II. 測定条件の影響

概要

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合着用セメント表面に接した少量の試験液のpH変化をフラット型pH複合電極により測定した。今回は,硬化中の放置時間,試験液,フィルターの影響を検討した。初期のpH値の減少速度は放置時間が長くなると各セメントとも減少した。ポリカルボキシレートセメントに接した試験液は最も高いpH値と最も早い中和速度を示した。グラスアイオノマーセメントに接した試験液のpH変化は初期段階ではリン酸亜鉛セメントとほぼ同じであったが,中和速度はリン酸亜鉛セメントより少し大きい。NaHCO_3溶液と人唾液はともに各セメントのpH値の初期の減少速度が他の試験液(蒸溜水,NaCl溶液,アルブミン溶液)よりも小さい。さらに,各液のpH変化はセメント表面と電極の測定面との間のフィルターの種類によっても異なる。すなわち,初期のpH変化は,セメント表面の未反応のセメント液の量と,セメント表面から電極表面にまで達する径路内の酸の拡散によって影響されるものと考えられる。このことは,セメントと歯牙組織という臨床的な環境が酸刺激を軽減するのに効果的な条件であることを示している。
日本歯科理工学会の論文
1986-12-25