希塩酸溶液から二酸化鉛水和物への金(III)の吸着挙動

概要

論文の詳細を見る
四酢酸鉛の一定量を加水分解して得られる二酸化鉛水和物(HLD)に対する希塩酸溶液からのAu(III)の吸着挙動を検討した.塩化金酸の塩酸溶液の一定量を加熱濃縮することにより, できるだけ塩酸を除去後, 水で希釈してAu(III)標準溶液を調製した.この溶液中の全塩化物イオン濃度, すなわちAu(III)のテトラクロロ錯イオン中の塩化物イオンと遊離の塩化物イオンとの合量, のAu(III)濃度に対する比([Cl^-]_<tol>/[Au(III)])が10〜11の溶液を用いた.その結果, 100ml中にHLD5×10^<-4>mol, Au(III)濃度が1×10^<-5>Mの条件で, Au(III)の吸着率は, pH0付近から増加し, pH2〜7の範囲でほぼ100%となり, pH8以上では減少し, pH11以上では全く吸着しない関係が得られた.吸着化学種は, Au(III)の陰イオン(クロロ錯イオン)と考えることができた.pH2では100ml中にHLD5×10^<-4>molの条件で, 約2×10^<-5>M以下の溶液中のAu(III)がほぼ100%吸着される関係が得られ, 飽和吸着量は, 7.0×10^<-3>mol/molHLDであった.又, Au(III)標準溶液中の全塩化物イオン濃度のAu(III)濃度に対する比が約40以上になると, Au(III)の吸着量が著しく減少することが分かった.
社団法人日本分析化学会の論文
1990-04-05