分散OS XEROにおける協調処理のためのトランザクション機構の検討
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概要
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分散オペレーティングシステムXEROの分散共有格納庫(DSR)は,LANのようなネットワーク環境において,複数のファイルサーバを用いたファイルの位置独立な単一の名前空間及びファイルに対する統一的なアクセス機構を実現し,ユーザに情報の分散と永続のための言語独立な機構を提供する.DSRのこの分散性と永続性を利用したアプリケーションの一つに,複数のユーザによる共同設計作業やソフトウェアの共同開発作業を支援するシステムが考えられる.そのようなシステムでは,ユーザは会社の組織のように開発モジュール毎にグループ分けされ,各グループで比較的独立にモジュールの開発を行ない,完成品を他のグループに公開するという形をとることが多い.また各グループにおけるモジュール開発においてもユーザはさらに小グループに細分化され、同様に小モジュールの開発を行なう。つまりモジュールの階層性に対応してユーザは階層的にグループ分けされ,グループ内のユーザ同士で協調してモジュールの共同開発を行い,そのモジュールが完成した段階でもう一層上のグループのユーザに公開する.このときに,ユーザがどのグループに属していようとも同一の名前空間が提供され,且つ所属するグループに応じて適当なファイルの実体にアクセスする機能が望まれる.本稿では,DSRの一拡張としてExperimental DSR(EDSR)と名付けられた永続情報の管理空間を提案する.EDSRはDSRまたはEDSRの部分空間として階層的に定義され,部分空間内のファイルの名前と実体のマッピングを変更する機能を持つ.よってEDSRを用いることで,グループにおいて開発途中のモジュールの保存,共有する場所は自然に表現できる.このように状況に応じてマッピングを変更する機能は,多数の異機種コンピュータが接続されたネットワーク環境で複数のユーザがDSRを利用する,という通常の利用環境においても非常に有用である.例えば多数の異機種コンピュータのネットワークにおいては,異機種空間では共有できないファイルを各機種毎にEDSRとして定義すれば,同じ名前でマシン毎に適切なファイルにアクセスすることができるし,EDSRを用いた複製を作ることで速度及び可用性を向上できる.また,複数のユーザがDSRを利用する場合において,ユーザ毎にEDSRを用意すれば,各ユーザは自分用にカスタマイズしたファイルに対しても元と同じ名前でアクセスすることができる.以下,2章では分散OS XEROのDSRを用いた計算モデルを述べ,3,4章でその拡張としてのEDSRの定義とその実現方法をそれぞれ述べる.
- 一般社団法人情報処理学会の論文
- 1992-09-28
著者
-
猪原 茂和
株式会社日立製作所中央研究所プロセッサシステム部
-
加藤 和彦
東京大学理学部情報学科
-
益田 隆司
東京大学理学部情報科学科
-
猪原 茂和
東京大学理学系研究科情報科学専攻
-
坂田 尚也
東京大学理学部情報科学科
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