塔型多段醗酵槽を用いるエタノールからの酵母の連続醗酵
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概要
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近年, 石油化学製品を炭素源とする醗酵は多くの研究者によって急速に発展して来た. 本報告では, 炭素源として種々の利点を有しているエタノールを唯一の基質とし, 塔型多段醗酵槽 (3段階) を用いて連続醗酵を行ない, 単槽連続醗酵の場合と比較して酵母菌体の生産性, 及び基質エタノールの流出損失とに着目して検討を行なった.使用菌株はCandida utilis 4215で, 基質エタノールとしては16 g/lを用いた. 培養温度は28±0.5℃, pHは各段に設置したpH計にて測定し, NH_3ガスによって自動的に5.0±0.2に制御した.本報告に使用した塔型3段醗酵槽は150 mm, 塔長600 mmで, 3枚の多孔板を塔内に水平に設置し, 空気および培地を塔下部より導入して, 多孔板間において気液を塔上部方向へ並流的に移行するように設計されている. 本装置を単槽として使用する場合は最下部の多孔板のみを空気分散板として設置した. 供給空気量は30 l/minで, 空塔速度としては, 2.83 cm/sec, 多孔板の孔を通過する平均空気流速として5.05 m/secであり, この設定値は多孔板を介して, 上段の槽より下段の槽への逆流混合が起こらない条件である. 単槽連続醗酵の場合の稀釈率 (D=F/V) としては0.0362から0.176 (hr^<-1>) の範囲で, また, 3段階の場合の稀釈率 (D=F/Σ^^3__<i=1>Vi) としては0.038から0.069 (hr<-1>) の範囲で行なった.単槽連続醗酵に於いて, エタノールを制限基質としたMonodの式が適用され得る. また, 槽内菌体濃度と排出醗酵液中の菌体濃度とに差があり, 菌体の泡吸着係数 (β) を考慮しなければならないことが判った. 本培養系におけるβの値は稀釈率 (菌体の比増殖速度) に無関係に0.83であった. 3段塔連続醗酵においても, 排出液内菌体濃度が塔最上段槽内の菌体濃度より低いことが認められ, 単槽の場合と同様, 各段における菌体濃度の物質収支式を導く場合, βを考慮する必要がある.基質エタノールの物質収支式を導くとき, エタノールは揮発性基質であるから各段において基質エタノールの蒸発および吸収を考慮する必要がある. 従って, 本装置における基質エタノールの見掛け蒸発係数K'および見掛け吸収係数k'を実測し, それらの数値を基質エタノールの物質収支式に導入した. 多段(3段)連続醗酵における菌体濃度と基質濃度の定常状態の実測値について, 物質収支式から導かれる計算値とを比較検討した. 稀釈率が大きくなると可成りのずれが認められたが, 稀釈率の小さい場合には計算値と実測値とが良い一致を示した.単槽と3段階との連続培養の実験結果に基づく菌体生産性 (XD), および基質エタノールの流出損失(SD) とを比較した. 両者の最大菌体生産性 (XD_<max>) は単槽の場合はD=0.12 (hr^<-1>), 3段階の場合はD=0.054 (hr^<-1>) において, ほぼ同一値を示した. しかし, その最大菌体生産性を与える稀釈率における基質エタノールの流出を比較すると, 単槽の場合は導入エタノール量に対して約半量のエタノールが流出するのに対して, 3段階の場合の流出エタノール量は殆ど0であり, 3段階の方が経済的に有利であることが判る.また, 3段階として用いた場合の方が単槽の場合より消費エタノールに対する菌体収率が良かった.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1973-08-25
著者
-
尾崎 浅一郎
三楽オーシャン株式会社:中央研究所
-
北井 淳夫
三楽オーシャン株式会社, 中央研究所
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五嶋 慎治
三楽オーシャン株式会社・中央研究所
-
北井 淳夫
三楽オーシャン株式会社:中央研究所
-
北井 淳夫
三楽オーシャン(株)
-
五嶋 慎治
三楽オーシャン(株)中央研究所
-
五嶋 慎治
三楽オーシャン株式会社:中央研究所
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