多孔板段塔の多段連続培養槽としての性能(5)ナフタリンよりサリチル酸の連続発酵
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概要
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緒言流動特性の実験から, 気液並流系の多孔板段塔では多孔板の孔径を2mmとした場合には, それら多孔板で仕切られた部分が, 各々の保持する液の逆混合のない, ほぼ独立した槽として取り扱えることを報告した.本報では, この多孔板段塔を用いて, ナフタリンを原料とするサリチル酸発酵を回分および連続的に行なった結果について記した.この段塔は酸素移動容量係数の測定値からも, 十分好気発酵に使用しうることが予測されたが, 特に炭化水素酸化発酵の例としても, サリチル酸発酵は好適と考えられた.一方, 別にこのサリチル酸発酵は, 通常の状態では, 基質制限ではなく, 生産物阻害によって発酵の進行が制御されることが明らかとなっている.この事実から誘導された.増殖および生産の速度式を用いて連続培養, 特に多段連続培養における増殖量, サリチル酸濃度の予測を試みた.これを実験値と比較し, 本装置の多段槽としての機能を確認した.実験方法直径7cmの円塔内に孔径2mm, 開口面積率10%の孔板を, 塔中間部より上部に5枚設置したものを多段槽とし, 多孔板を除いた気泡塔を, 単槽とした.塔底より培養液, 空気を並流的に供給して連続培養を行なった.回分培養時には液の供給を停止した系とした.塔内の培養液量は3〜3.4lであった.原料ナフタリンは工業用粗塊のまま, 過剰量200〜400gを塔内に充てんし, 微生物Pseudomonas aeruginosa B-344による発酵速度を制限しないようにした.培地組成は前記固体ナフタリンの他は, KH_2PO_4 2.0%, NH_4Cl0.25%, MgSO_4・7H_2O0.05%, MnCl_2・5H_2O0.02%, CaCl_2 0.05%その他若干のtrace elementsを含むものとした.初発pH7.2,培養温度29〜31℃, 通気量は線速度(容塔基準)で2.45cm/sec.であった.結果気泡塔内(単槽)での回分培養の結果, 発酵時間40時間でサリチル酸濃度8.8g/l, に達した.これは既報の結果をよく再現し, この塔が好気発酵槽として十分な性能を有することを示すものと考えられた.多量のナフタリン粗塊を投入しても, 発酵を阻害しなかった.次いで, この状態(単槽)で連続培養を行ない, 4定常状態値を得た.稀釈率, 菌濃度, サリチル酸濃度はそれぞれ0.052hr^<-1>で2.1(U.O.D.), 6.4g/l : 0.076hr^<-1>で1.94(U.O.D.), 5.3g/l0.10hr^<-1>で1.50(U.O.D.)4.2g/lおよび0.129hr^<-1>で1.2U.O.D, 3.1g/lであった.稀釈率と生産物濃度の関係は直線的であり, すでに提出した発酵速度式をきわめでよく満足するものであった.この単槽連続培養の結果をもとにして, 多段連続培養の際の定常状態値を計算予測した.同様条件で多段槽として連続培養を行ない, 第1段(最下段)で菌濃度1.65(U.O.D.)サリチル酸3.4g/l, 第5段(最上段より2段目)で菌濃度3.40(U.O.D.), サリチル酸6.4g/lのごとく, 順次上段槽になるにつれて, 菌濃度, 生産物濃度ともに高くなる結果を得た.これは, 設置した多孔板が, 培養液の多孔板を通して隣接の段槽の液と混合する現象, いわゆる逆混合を十分阻止し, 各段が独立した槽としてみなされるような機能を, この塔に付与したものと考えられる.この結果は, 既報の工学的実験から予測された性能を培養工学的に示したものである.定常状態の実験値と, 反応速度式よりの計算値との比較において生産物濃度の予測はきわめて良好であった.この実験で本装置の連続発酵における多段槽としての機能が確認されたが, サリチル酸発酵における多段連続化による蓄積効果は予測値においても, 実験埴によっても認められなかった.
- 1969-09-25
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