気液並流系多孔板段塔の多段連続培養槽としての性能 : (III) 酸素移動係数の測定
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概要
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諸言 前報までに, 連続培養定常状態における菌令分布および菌懸濁液をトレーサーとする滞溜時間分布の測定などの実験を行ない, 本多孔板段塔が気液並流の条件下でも, 多孔板で仕切られた各段槽がかなり独立した完全混合槽として取り扱えることを報告した。すなわち多段槽と同様の性能を有することが判明した。工業的に多くの発酵は, 好気発酵であり, その産業物の収率, 濃度などは, 酸素移動速度によって制限されることは多くの例に見られるところである。また, これらの発酵のスケールアップは, 酸素移動速度係数を指標として行なわれる場合がほとんどである。一方, 化学工業装置として多孔板段塔は, 蒸溜塔, 気液接触装置として使用されているが, ガス側の濃度を高く保ち, driving forceを維持するために, 気液向流系として用いられている。ところが, 発酵プロセスの場合は, 微生物によって消費される酸素量の全供給酸素に対する割合は低く, 気液並流系として操作を行なっても, 影響は少ないと考えられた。以上のごとき観点から, 亜硫酸ソーダ空気系で, 亜硫酸々化速度を測定し, 装置設計と酸素移動係数の関連を求めてみた結果を報告する。実験結果と考察 装置は, 前報に報告したものと同じ直径7cmの塔で, 各種多孔板で4段に仕切ったものを主に用いた。別に直径145cmのものを6段に仕切ったものについても測定した。実験の方法は, Cooperらおよび吉田らに従って行ない, 総括容量係数K_L・a(hr-^1)を次式によって求めた。-(1-ε_G)(dC)/(dθ)=2K_L・aH・P Cは亜硫酸ソーダ濃度, (kg・mole/m^3), θは時間(hr), ε_Gはガスホールドアップ, pは酸素分圧(atm), ただし空気の出口および入口濃度の算術平均, Hはヘンリー定数(kg・mole/m^3 atm)である。測定はすべて回分で行なった, 実際は連続培養槽として運転するのであるから, この点矛盾があるようであるが, 培養時の液流速は空気速度に比してきわめて小さく, 液の流動の, K_L・aに対する影響は少ないものと考えた。たとえば, 稀釈率を0.5hr^<-1>として通常の培養を行なうとすれば, 空気線速6cm/secを要するので, 液の空気に対する流速比は0.0013となりきわめて小さい。2mm孔径の多孔板をそう入りすることによって, ガスホールドアップは増加した。これは多孔板の下に認められた空間によるものと思われる。しかし多孔板孔径を10mmとするとガスホールドアップは低下した。亜硫酸ソーダ溶液系と水系とでガスホールドアップに著しい差はなかった。孔径2mmの多孔板の場合, 空気線速0.7cm/sec〜7cm/secの範囲ではK_L・a=34Us^<1.30>なる関係が得られた。一方多孔板を用いない場合には, 空気線速の増加に対応したK_L・a増加が得られず, 多孔板を設置した効果は, 物質移動操作上からも有効であることがわかった。2mm孔径の多孔板の場合, K_La値は, 空気線速6cm/secで400hr^<-1>を得た。多孔板孔径を5mm, 10mmとした場合は, 無多孔板よりはやや高いK_L・a値を与えるが, 対数グラフ上で空気線速との直線性は得られなかった。7cm直径の塔内では各段でのK_L・a値の差は有意ではなかった。孔板間かく20cm, 40cm, 80cmとして塔内でのK_L・aを測定したところ, 80cmでは多孔板のない状態とほぼ同じ結果を得た。塔を直径145mm, 1段槽の高さ20cm, 全段数6,多孔板孔径2mm, 開口率10.0%とした場合にも, 同様の直線性が得られた。本段塔のスケールアップは, 空気線速を基準として行なえることが予想された。本段塔で得られたK_L・a値を, 吉田らの結果と比較し, その妥当性を論じた。また, 通常の通気撹拌槽で所要のK_L・a値を得るための動力(撹拌, 通気所要動力)と, 本段塔での所要動力を比較し, K_L・a 300hr^<-1>程度以上では, 本段塔がきわめて有利であることを示した。
- 1969-06-25
著者
-
尾崎 浅一郎
三楽オーシャン株式会社:中央研究所
-
北井 淳夫
三楽オーシャン株式会社, 中央研究所
-
五嶋 慎治
三楽オーシャン株式会社・中央研究所
-
北井 淳夫
三楽オーシャン株式会社:中央研究所
-
北井 淳夫
三楽オーシャン(株)
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五嶋 慎治
三楽オーシャン(株)中央研究所
-
五嶋 慎治
三楽オーシャン株式会社:中央研究所
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