暗色雪腐病菌Racodium therryanumによるエゾマツとアカエゾマツ種子の腐敗に関する病態解剖学的研究
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概要
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5℃の低温下における暗色雪腐病菌Racodium therryanum THUEM.の侵害に伴うエゾマツとアカエゾマツ種子の活力と組織変化について調査した。本菌を接種した土壌上に静置した種子の活力は静置後45日目に, エゾマツの場合は66%の低下が現れ, アカエゾマツの場合は完全に喪失した。病態解剖の観察では, アカエゾマツ種子の胚乳・胚組織内におけるR.therryanum菌糸の生長が, エゾマツ種子内より旺盛であり, また, 菌糸の胚乳細胞壁の貫通とより激しい組織変色がアカエゾマツ種子内で観察された。これらのことから, アカエゾマツ種子はエゾマツ種子に比べ, R.therryanum菌の侵害に対しより高い感受性を有することが判明した。また, 両樹種とも胚乳・胚組織内に侵入した菌糸に変形が認められ, エゾマツ種子内の菌糸変形がアカエゾマツ種子より遙かに著しかった。エゾマツ種子の感受性がアカエゾマツほど高く示されなかったのは, エゾマツ種子内の激しい菌糸変形に関連すると思われる。さらに, 双方とも外種皮内への菌糸侵入が認められず, 珠孔および種皮の破裂部付近に菌糸集団がよく観察されたことから, R.therryanum菌は珠孔または種皮の破裂部分を経由して種子の内部に侵入したものと考えられる。
- 一般社団法人日本森林学会の論文
- 1988-08-01
著者
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