木材炭化に関する研究(第16報) : ヘミセルローズと他の木材成分との結合について
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概要
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過沃素酸によるGlycolの酸化開裂反応を利用して, 酸化後のキシローズ残存量から, ヘミセルローズの結合関係を調べた。ヘミセルローズとリグニンやセルローズとの結合及びヘミセルローズ自体の分枝を考慮して, アルコール・ベンゼン抽出木粉, 1%NaOH 処理木粉, ホロセルローズ, 1%NaOH 処理ホロセルローズを試料として用い, 樹種については広葉樹, アラカシ・アカメガシワ, 針葉樹, スギ・アカマツに就て実験を行つた。アルコール・ベンゼン抽出木粉と1%NaOH処理木粉の酸化後のキシローズ残存量の差は, アセチル基との結合により保護されたキシローズ量を示す。広葉樹については, アセチル基とキシローズの結合比が1mol : 1molとすれば, 少くともアセチル基全量の 50%はキシローズ或はへミセルローズに結合していることがわかり, 逆に, アセチル基全量の最大 50%はへミセルローズ以外の木材成分と結合していることになつた。ホロセルローズの酸化後のキシローズ残存量の観測値とホロセルローズ中のアセチル基含量から計算した残存すべきキシローズ量とを比較すると, 観測値の方が相当小であり, その差に相当するアセチル基がキシローズ以外の他の成分と結びついていることを意味し, 更に観測されたキシローズ残存量値の中には, セルローズとの結合, ヘミセルローズの分岐により酸化から保護されたキシローズも含まれており, この量に相当するだけ, 更にアセチル基の保護は減じ, 従つて他の成分に結びついたアセチル基量が増し, かくて広葉樹においてもアセチル基の相当量はヘミセルローズ以外の他の木材成分と結合していることが立証された。針葉樹については, 木材のアセチル基含量が少量であり, しかもその中ヘミセルローズには, 少量即ちスギの場合アセチル基全量の33.6%, アカマツの場合9.5%しか結合していない結果となつた。これを観測値の面から見ると, 実験誤差範囲内の値であり, 判然としたことはいい切れない。少くとも広葉樹に比べてより多い割合で, アセチル基はヘミセルローズ以外の木材成分と結合しているといえよう。アルコール・ベンゼン抽出木粉とホロセルローズとの酸化後のキシローズ残存量の比較から, 全樹種とも木材中のキシローズ全量の約20%はリグニンと結合していると言い得るに足る, 注目すべき事実が知れた。アラカシヘミセルローズの酸化後のキシローズ残存量からはキシローズ全量の約2.8%は分岐により酸化から保護されていることが知れた。ヘミセルローズとセルローズとの結合については, 酸化後のキシローズ残存量の差が実験誤差範囲内の値を超えず, 判然とした推論は得られない。
- 1958-01-25
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