カラマツ根株心腐病菌の林床での分布
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概要
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カラマツ根株心腐病菌の一種である未同定担子菌Basidiomycete-1の株床での分布について、筑波大学農林技術センター川上演習林のカラマツ人工林内に試験地(面積0.98ha)を設け、1987年から1993年の7年間捕捉杭を用いて試験した。また、これと併行してBasidiomycete-1の分布と土壌含水比および土壌pH値との関連について検討した。調査結果より本試験地におけるBasidiomycete-1の分布状況は標高1,505mから1,515m間の尾根付近で集団状に、また、標高1,505m以下の尾根から沢沿いにかけて散発的および単発的に認められた。本菌の捕捉率(捕捉杭数×100/全設置杭数)は、年によって増加または減少することが判明したが、これら年により捕捉率が増減する原因は不明である。Basidiomycete-1と土壌含水比との関係は、本菌が捕捉された近接地点の平均含水比は91%(範囲24〜130%)、一方、本菌が捕捉されなかった近接地点の平均含水比は79%(範囲21〜169%)で、t検定の結果、両者間に有意差が認められた。また、Basidiomycete-1と土壌pH値との関係は、本菌が捕捉された地点の平均pH値は5.0(範囲は4.3〜6.5)、一方、捕捉されなかった地点の平均pHは5.2(範囲は4.4〜6.8)で、t検定の結果、両者間に有意差が認められた。従来から根株心腐病の発生要因は土壌の通気性、透水性等の物理的要因との関係が指摘されているが、本調査結果は本病発生要因を解明する第一歩といえよう。
- 1995-01-01
著者
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