灰色かび病菌(Botrytis cinerea)の菌糸融合によるベノミル耐性転移

概要

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ベノミル耐性菌株との菌糸融合による感性菌株の耐性獲得について二つの実験系を用いて直接的な証明を試みた。実験1:IPCR-1(MIC<3ppm), IHES-3(3,000<MIC<3,250ppm)両菌株の分生胞子懸濁液をカバーグラス上に滴下・培養後, ベノミル(10ppm)添加PSA培地に移植・培養し, 耐性菌株との菌糸融合確認後, 伸長した感性菌株の菌糸体を分離した。分離菌糸体(PHGF-1)はベノミルに対し耐性(MIC=3,500ppm)を示し, 継代培養後も安定していた。PHGF-1の生育速度, 胞子形成, キュウリに対する病原性ともに親菌株より優れていた。実験2:透析膜上で, IPCR-1, IHES-3両菌株の胞子を培養後, 透析膜を切り出し各菌株の単一菌糸が交差するようにPSA培地上の透析膜に移動・培養した。菌糸融合の確認後, 感性菌株の菌糸先端を単菌糸分離してベノミル添加培地で耐性を検定した。分離8単菌糸(PHDF-1〜8)のうち, 7単菌糸(PHDF-2〜8)で耐性獲得(2,050<MIC<2,250ppm)が認められ, それらの耐性は継代培養後も安定していた。これらの菌叢形状, 生育速度, 胞子形成はそれぞれ多様であった。
日本植物病理学会の論文
1988-07-25