(42)イネいもち病菌の菌糸伸長抑制におよぼす水溶性ケイ酸の影響

概要

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イネ表皮細胞に蓄積された不溶性ケイ酸はいもち病菌の侵入を物理的に阻止するが,水溶性ケイ酸の発病抑制におよぼす影響は不明な点が多い.そこでケイ酸施用したイネを蒸散抑制栽培し,5.0葉期に胞子懸濁液を噴霧接種した.第3葉では,蒸散抑制区において病斑数は無処理区の約1/3に減少し,水溶性ケイ酸含有率は無処理区で240mgL^<-1>に対し,抑制区で318mg L^<-1>に増加した.また,ケイ酸濃度の異なるイネの溢泌液を塗布した素寒天培地での菌糸伸長距離は,溢泌液のケイ酸濃度388mg L^<-1>区では99mg L^<-1>区の半分に抑制された.次に,ケイ酸カリウム試薬で作った濃度の異なるケイ酸溶液に寒天を加えた培地に,いもち病菌を移植した.移植15日後のケイ酸318mg L^<-1>区での菌糸伸長距離は12.7mmで,ケイ酸無処理区の62.3%に抑制されたが,240mg L^<-1>区では無処理区と同等であった.SEMとEDXによるとケイ酸318mg L^<-1>区の菌糸にケイ素が培地表面と同濃度で分布していた.以上の結果より,318mg L^<-1>程度以上の高濃度の水溶性ケイ酸は,いもち病菌の菌糸伸長を抑制すると考えられた.
日本植物病理学会の論文
2003-02-25