ベンガル湾およびシャム湾に産するミナミカブトガニTachypleus gigasにみられる形態的変異
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概要
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著者らがインド国西ベンガル州・ディガで採集したミナミカブトガニ(新作)Tachypleus gigasは,タイ国バンセンで得られたものと,一見別種のような印象を受けるほど大きさ,形態などにちがいが認められた。しかし両者のヘモシアニンの電気泳動パターンには差がみられず,カブトガニT. tridentatusやマルオカブトガニCarcinoscorpius rotundicaudaのそれと比べると著るしいちがいがあった(Fig. 7)。そこで両者を同一種とみなじそれらにさらにマレーシァ国ペナン産の標本を加えて,それぞれの雌雄のいくつかの特徴的な部分(Fig. 2)を測定し,比較した(Table 1,2)。その結果わかった主な点は次のとおりである。1)体長は雌雄ともバンセン産かディガ産に比べて大きく,とくに雌では前者が後者の1.4倍であった。ペナン産はバンセン産次に近い値を示した。2)頭胸部の幅についても 1)とほぼ同様なことががいえ,とくに雌はディガ産と上バンセン産の差が著るしかった。3)尾剣削の長さについても1)2)と同様なことがいえるが,長さと幅の比をみると,ディガ産のものが最小,バンセン産が最大,ペナン産が中間値を示した。4)第I棘から第IV棘までの腹部縁棘の長さは,雄では三者の間に著るしい相違は認められなかったが,雌ではディガ産では第I〜第IIIが略同長で長く,第IV〜第VIも短いながら前者に似た細長い角状を示すのに対し,ペナン産およびバンセン産は第IV〜第VIが極めて短かい退化型を示した。5)またバンセン産の雌は第III縁棘に先端の曲った短縮化が見られたのに対し,ペナン産では前から第III縁棘では先の尖った直線状dであり,この点でもディガ産とバンセン産の中間型を示した。第IV縁棘以後の短縮化はカブトガニ T. tridentatusと酷似しており,産卵習性と密接な関連があると思われるが,ディガ産の雌の比較的長い棘の存在はこの習性と関連して考えると極めて興味深い問題であり,今後の調査を要する。
- 日本動物分類学会の論文
- 1976-12-20
著者
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