老化血管に対するポリフェノール含有赤ワイン凍結乾燥物の内皮依存性弛緩作用とその機序:若齢血管との比較
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概要
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[目的]我が国では高齢者人口の増加に加えて、動物性脂肪摂取量の増加など食生活の欧米化に伴い、動脈硬化等の循環器疾患が増加している。しかし、フランスでは動物性脂肪摂取量が多いにも関わらず、冠動脈疾患等による死亡率は他国に比べ少ない。フランスでは赤ワイン摂取量が多いことから、赤ワインに含まれるポリフェノール化合物(Red Wine Polyphenolic Compounds; RWPC )が循環器疾患予防改善効果をもたらすと示唆されている。しかし、このようなRWPC の循環改善効果に対して、RWPC がどのようにして血管の収縮弛緩を調節しているのかは未だ十分に明らかにされていない。特に、虚血性心疾患の罹患率が増加する高齢者に対しても、RWPC が循環機能改善効果を発揮できるか否かは不明である。そこで本研究では、RWPC による血管弛緩作用およびその作用機序、さらに加齢によってRWPC の血管に対する作用がどう変化するかを、ラット摘出胸部大動脈を用いて検討した。[方法]実験には若齢(2〜3ヶ月齢)および老齢(27ヶ月齢)の雄性 Fischer 344ラットを用いた。内皮細胞無傷標本および内皮細胞除去標本を、混合ガスを通気した Krebs-Henseleit 液で満たしたorgan bath に懸垂し、その等尺性張力を測定した。[結果] RWPC は、内皮細胞無傷標本において濃度依存性に強い血管弛緩反応を惹起した。この血管弛緩反応は、若齢および老齢ラットの双方で同程度認められた。しかし、この弛緩反応は、いずれの群でも内皮細胞の除去により消失した。RWPC による若齢ラットの血管弛緩反応は、NO 合成酵素阻害薬である N^G-nitro-L-arginine (L-NNA, 100μM )、cyclooxygenase 阻害薬であるdiclofenac (10μM )、および 30mM KCl によって有意に抑制された。老齢では、L-NNA およびdiclofenac による抑制の程度は若齢より弱く、30mM KCl で最も有意に抑制された。[結論] RWPC は、老化ラットにおいても若齢ラットと同様に、内皮細胞依存性に血管を弛緩させた。その弛緩反応には、若齢ラットではNO 、プロスタサイクリンおよび過分極因子(EDHF )が関与しているのに対して、老齢ラットでは主としてEDHF が関与していることが示唆された。
- 2005-02-16
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