Urotensin IIは、若齢および老齢Fischer 344ラットの灌流心臓において、内皮依存性に冠血流を増加させる
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概要
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Urotensin II(UTII)は、魚類の神経分泌系から単離された12個のアミノ酸からなる環状ペプチドである。最近ヒトでも11個のアミノ酸からなるHuman urotensin II(hUTII)が同定され、その受容体が哺乳類の心臓血管系にも高密度に分布すること、ラット胸部大動脈標本に対しエンドセリン-1より強力な血管収縮作用を示すことが報告された。しかしながらhUTIIの哺乳類心臓に対する作用とその加齢変化については明らかになっていない。そこで、本研究では、hUTIIの冠循環および心機能に対する作用と加齢変化について検討した。実験には、2〜3ヵ月齢(若齢)、27〜32ヵ月齢(老齢)の雄性Fischer 344ラットを用いた。摘出心臓をLangendorff式に定圧灌流し、冠流量、心拍数、左心室内圧およびその一次微分(LV dP/dt)を測定した。hUTIIは、一過性の冠血管収縮作用を惹起した後に、持続的な血管拡張作用を示した。その冠血管拡張作用に加齢差は認められなかった。hUTIIによる冠血管拡張作用に対する内因性拡張因子の関与を、NG-nitro-L-arginine(L-NNA,NO合成阻害薬)とDiclofenac(シクロオキシゲナーゼ阻害薬)を用いて検討した。その結果、L-NNAは若齢ラットにおいてhUTIIの冠血管拡張作用を抑制したが、老齢ラットにおいては抑制しなかった。Diclofenacは、hUTIIによる冠血管拡張作用を両月齢ラットにおいて強く抑制した。また、冠流出液中のPGI2量をEIA法で測定した結果、hUTIIによるPGI2の産生促進作用は、両月齢ラットにおいて同程度であった。hUTIIは、心拍数を持続的に増加させたが、心筋収縮力に対しては有意な作用を示さなかった。以上の結果から、hUTIIのラット心臓に対する主な作用は、冠血管に対する内皮依存性拡張作用であること、その作用は老化によって減弱しなかったが、老化によりNOの関与が減少し、主にPGI2が拡張作用に寄与することが示唆された。
- 山形大学の論文
- 2003-08-15
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