胎盤性Sulfatase欠損症の内分泌学的および酵素組織化学的研究

概要

論文の詳細を見る
胎盤性sulfatase欠損症(PSD)の病態生理を明らかにするため内分泌学的および酵素組織化学的検討を行なった.31歳のPSDが疑われた2回経産婦の母体血中,尿中および〓帯血中の各種steroid hormoneを測定し,また本症例の胎盤およびそのcontrolとして正常胎盤2例の胎盤homogenateを用いてincubation実験を行ない,各々の胎盤におけるDHA-SからDHAへのconversion rateからそのsulfatase活性を求めた.さらに,胎盤酵素組織化学は本症例の胎盤と正常胎盤を用い,6-bromo-2-naphthylsulfateをsubstrateとしたincubation solutionを含むgel上で反応を行ない,光学顕微鏡で観察した.また,電子顕微鏡でmethylumbelliferyl sulfateをsubstrateに用い,arylsulfatase Cの細胞内局在について観察した.以上について検討を行ない以下の結果を得た.1)尿中E^3は2.5mg/day以下の異常低値を示し,DHA-S負荷試験においても,母体血中および尿中E^1,E^2,E^3に大きな変化はなかった.2)DHA-SからDHAへのconversion rateからみたsulfatase活性は正常胎盤2例では80.4%,81.6%であり,本症例では1.9%と極めて低値であった.3)光学顕微鏡による酵素組織化学では正常胎盤においてはarylsulfataseC活性をsyncytiotrophoblastに認めたが,本症例の胎盤では同活性を認めなかった.4)電子顕微鏡による酵素組織化学では正常胎盤においてはarylsulfatase C活性をsyncytiotrophoblastのendoplasmic reticulumに限局して認めたが,本症例の胎盤ではいずれの部位にも同活性を認めなかった.5)本症例の出生児は男児であり,X-linked ichthyosisを示した.以上より,PSDにおける内分泌学的および酵素組織化学的検討はPSDの診断に有用であると考えられた.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1985-03-01

胎盤性Sulfatase欠損症の内分泌学的および酵素組織化学的研究

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク