排卵期ヒト卵胞顆粒膜細胞の微細構造
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
卵胞発育および排卵,黄体形成にともなう卵胞顆粒膜細胞の微細構造学的変化を明らかとするために,正常排卵周期を有する婦人より24例の健常発育卵胞を得て卵胞顆粒膜細胞につき微細構造学的に検討した.卵胞期初期から中期に得られた直径1〜15mmの卵胞では多数の分裂顆粒膜細胞を有し,顆粒膜細胞には良く発達した粗面小胞体,多数のFree ribosomes および胞体周辺部で多くのmicrofilamentsを認めた.卵胞期末期の直径10〜15mmの大卵胞では,小管状のcristaeを持つ大型糸粒体,多数の脂肪滴および良く発達したGolgi装置を見るが,滑面小胞体(_<s>ER)を認め難い,初めて_<s>ERを認め多数のlysosome様顆粒を観察する.赤体期では_<s>ER,nexusは明らかに増加するが,排卵前顆粒膜細胞と同様の微細構造を持つ.以上の結果から,卵胞期中期までの顆粒膜細胞では蛋白質合成能に富み高い分裂能を有するとともに,多数のmicrofilamentsにより,卵細胞を支持,保護する事が推測できる.卵胞期後期に至り顆粒膜細胞はsteroid産生細胞への分化を開始すると思われ,大型糸粒体出現し,脂肪滴も増加する.排卵直前卵胞顆粒膜細胞では,steroid産生細胞としての微細構造を有し,卵胞破裂前に既に黄体化が起こる事が明らかとなった.この期に多く見られるnexusは顆粒膜細胞が高estrogenの影響下にあり黄体化に関する情報伝達に重要である事を示唆すると共に,黄体細胞の顆粒膜細胞起源を裏づけるものであろう.また,この期の顆粒膜細胞は多数のlyssome様顆粒を有しており,lyssomesのsteroid代謝に対する役割が推測されるほか,卵胞構成せいぶんの融解によりlyssomesが排卵現象に積極的に関与する可能性が示唆される.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1980-02-01
著者
-
神崎 秀陽
京都大学医学部婦人科学産科学教室
-
岡村 均
京都大学医学部婦人科学産科学教室
-
西村 敏雄
京都大学医学部婦人科学産科学教室
-
竹中 章
京都大学医学部婦人科学産科学教室
-
竹中 章
滋賀医科大学 放射線科
-
矢島 康雄
京都大学医学部婦人科学産科学教室
関連論文
- 500 胎盤後血リンパ球の機能について : 末梢血リンパ球との対比において
- 426. 絨毛組織培養上清のIL-2効果増強作用
- Endometrial stromal sarcomaの1例
- 272. 性ステロイドの下垂体性ゴナドトロピン,プロラクチンの産生分泌におよぼす影響について : 第45群 内分泌 IX (269〜274)
- 121. 卵巣摘出イヌにおける昇圧反応に及ぼす性ステロイドホルモンの影響 : 第26群 妊娠・分娩・産褥・生理病理I
- 99.妊娠個体の子宮ならびに腎血行調節に対するProstaglandins の意義について : 第26群妊娠分娩産褥・生理I
- 51.家兎卵胞壁血管の超微形態学的検討 : インドメサシン投与の効果 : 第9群 不妊と避妊 (51〜57)
- 48.ヒト胎児子宮における平滑筋発生過程の超微形態学的検討 : 第8群 内分泌 II (44〜50)
- 47.家兎卵巣中の排卵酵素活性を介するPGF_の排卵効果 : 第9群 ***の生理・病理 IV (47〜53)
- 11.排卵過程におけるrat卵巣内plasminogen activatorの変動 : prostagladinとの関連について : 第2群 内分泌-基礎 II (7〜12)