悪性卵巣腫瘍の術後放射線療法におけるMoving strip法の検討

概要

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悪性卵巣腫瘍の治療は,手術によりでぎるだけ腫瘍を摘除し,その後放射線療法や化学療法が行われる.しかし,初期においても早期より腹腔内への広汎な進展が予想されるため,放射線療法としては下腹部のみの照射では不充分で,上腹部までの全腹照射法に期待がかけられている.我々は5年前より比較的副作用が少なく,しかも合理的な効果が期待されるMoving strip法による全腹照射を行っているので,今回その治療成績を検討してみた.昭和50年12月より昭和55年11月までに,漿液性腺癌24例,ムチン性腺癌7例,中胚葉性混合腫瘍3例,類中胃癌2例,類内膜癌2例,悪性顆粒膜細胞腫1例,悪性ブレンネル腫瘍1例,転移性腫瘍3例の計43例について,手術後Moving strip法により全腹照射(1区画1600rad照射)を行い,更に全骨盤照射3000radを追加している.原発巣の摘除が充分に行われた10症例において,9例が生存しており播種に対する予防的治療の意義は大きいと考えられる.またII・III期例の残存腫瘍部分の多い進行例においても,従来経験されなかったような全く奇跡的と思える程の著明な腫瘍の消失や縮小傾向が認められた症例も多く経験しており,一次効果は確かに優れたものを認めている.副作用は,下腹部照射時に下痢症状を,上腹部照射時に悪心・嘔吐を多少多く認めたが,末糖血所見,肝・腎機能にも著変はみられず,多くは中断することなく治療を終了することができた.以上のことから,短期に大量の照射が可能で,しかも副作用の少ないMoving strip法による全腹照射法は,悪性卵巣腫瘍の放射線治療法として極めて有効である.しかし,一次効果としては良好な経過をとりながら,1年半〜2年位後に腫瘍の急速な増大が認められる症例を続けて経験したので4例に反復照射を試みたが,必ずしも著効を認めたとは言い難かった.今後さらに,1回照射量や照射方法の改善と,化学療法や免疫療法の併用について検討を加えて行きたいと考えている.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1983-07-01

悪性卵巣腫瘍の術後放射線療法におけるMoving strip法の検討

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