新生児, 乳児における高カロリー輸液の経験
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概要
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以上, 教室にて施行した20例の高カロリー輸液症例につき検討を行なった.本法の施行により, 既に表4に示した如きいくつかの合併症を経験ているが, 点滴チューブを正しい位置に留置し(・・・・・・・・・・・・・・・・), 同時に慎重な管理を続ける事(・・・・・・・・・・・・・)によって, これら合併症の発生頻度は今後極少に留め得るものと思われる.但し, 敗血症は本法の施行上最大の難敵であり, 一たん発生すると極めて重焉な結果をとる事が多く, 我々も長期間チューブを留置した一例において敗血症の発生後死亡した症例を経験しているが, 現在の所輸注系統の管理に極力注意を払う以外に, これを完全に防ぐ手段はないようである.さて, いうまでもなく本法の最大の利点は, 従来全く不可能とされて来た長期非経口栄養維持を可能とした点であり, 例えば大量腸管切除, 長管アガングリオノージスなど, 腸管よりの栄養摂取が一時的・永久的に全く不能な場合, 又その他消化管手術後の種々の合併症に対しても, 絶大の効力を発揮する事が明らかにされている.一方以上の利点のみならず, 胃腸管を一定の期間休息させてこの間に瘻孔の閉鎖或いは腸管病変の治癒が期待し得る事, 又術直後より本法を使用して窒素平衡を保たしめ, 創傷治癒促進, 術後の腸管麻痺の経減が得られる事も大きな利点であろう.勿論以上の利点が得られるためには直接大循環系より投与された高濃度糖液をはじめとする各栄養素が常に利用されている事が必要であり, 今後の研究発展が期待される.現在の所, 血糖値, 尿糖値, 血中アンモニア, BUN, NEFA, 肝機能(特にGOT, GPT)などを絶えず慎重にcheckしながら行なえば大きな誤ちは防止しうるようである.欧米各施設では一般化されつつある高カロリー静脈栄養法ではあるが, 我国ではまだまだ一般化には程遠く, 研究業績も今の所未だ症例報告の域を出ない現状である.点滴注入系統の安全性の問題, 又代謝面或いは効果面よりの検討, あるいははその適応規準に関してすら未解決の問題が数多く残されている.この他, 未熟児における静脈栄養, 本法施行時の各臓器機能, 又術直後あるいはショック時の栄養の問題などに関しても今後, 種々の方面より検討を加えた幅広い研究が望まれる次第である.
- 日本小児外科学会の論文
著者
-
大橋 秀一
大阪大学医学部内視鏡外科講座
-
岡田 正
大阪大学医学部小児外科
-
宮田 正彦
大阪大学医学部第1外科
-
高尾 哲人
大阪大学医学部第1外科
-
飯田 喜彦
大阪大学小児科
-
松山 正経
大阪大学第1外科
-
佐谷 稔
大阪大学医学部曲直部外科
-
岡本 英三
大阪大学医学部曲直部外科
-
甲斐 浩
自治医科大学 小児科
-
飯田 喜彦
大阪大学医学部小児科
-
池田 義和
大阪大学医学部第1外科
-
辻本 雅一
大阪大学医学部第1外科
-
曲直部 寿夫
大阪大学医学部第1外科
-
松山 正経
大阪大学医学部第一外科
-
桑田 圭司
大阪大学医学部第一外科
-
甲斐 浩
大阪大学医学部小児科
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