開腹時に得られる腹水に関する細胞学的研究 : 特に卵巣癌の診断に関して

概要

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126例の卵巣腫瘍を含む合計296例の,婦人科開腹手術患者から採取した腹水中の細胞成分を検討して,次の成績を得た.1.卵巣腫瘍以外の患者の腹水中に最もしばしばみられた細胞は組織球と中皮細胞であった.前者の出現率(43%)は後者のそれ(34%)よりもやや高かった.しかし,これらの細胞の出現率と手術の適応(疾患)との間には,密接な関係はみられたかった.2.腹水中に含まれる甲皮細胞は3つのタイプに分けることができた.しかし,これら3型の細胞の出現状況に,月経周期による変化はみられたかった.3.卵巣腫瘍の表面が不規則であったり破綻しているときの腹水中には,腫瘍細胞が発見され易かった.他方,腹水が血性のときにも,腫瘍細胞は検出され易かった.4.腹水中への卵巣腫瘍細胞の出現は,明らかに悪性の場合に最も多く,中間群がこれに次ぎ,良性群では,最も少なかった.5.腹水中の細胞学的所見と卵巣腫瘍の組織像とを系統的に対比していくと,腹水中の細胞学的所見から,「悪性かどうか」のほかに,「どういう細胞型の卵巣腫瘍か」を診断することも可能である,との結論に著者らは達した.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1984-06-01