超音波断層法による頚管無力症の早期診断の試み

概要

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超音波断層法を用いて妊娠子宮頚部を観察し, 頚管無力症の客観的な早期診断の基準について検討した。対象は, 正常妊娠例78例, 頚管縫縮術施行例32例, 延べ検査回数は計238回で以下の成績を得た。1. 正常妊娠例の子宮頚管長は妊娠14〜24週までは, 相関係数0.25と有意な相関は示さなかった。しかし, 妊娠週数Xと子宮頚管長Yの間には, 回帰直線Y=0.45X+31.87の関係があり, 子宮頚管長が漸増する傾向を認めた。妊娠24週以降では逆に子宮頚管長は漸減し, Y=-1.07X+68.58, 相関係数-0.44と有意な負の相関を認めた (p<0.01)。2. 流早産に至った例の子宮頚管長は, ほとんどが正常例の-1SD以下であった。また, 妊娠24週未満に流産した例では, 子宮頚管長が漸増すべき時期に逆に漸減した。3. 羊膜腔の頚管内楔状突出像を認めなかった例は, 79例中78例が満期産に至ったが, これを認めた例は, 33例中9例が流早産に至った (p<0.001)。以上の成績より, 超音波検査上, 頚管無力症を強く示唆する所見は次のとおりといえる。1. 羊膜腔の頚管内楔状突出像がある場合 2.妊娠24週以前に子宮頚管長が短縮する場合 3. 子宮頚管長が正常妊娠の-1SD未満の場合。
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1989-05-01