単純全称命題の評価と意味記憶の関係について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
従来の意味記憶研究では,実験材料としては専ら全称肯定命題(UA)が用いられており,全称否定命題(UN)が取り上げられることは稀であった。しかし,日常行われる無数の意味判断が,「…である」の他に「…でない」という形でも表現されるものであることは事実であり,その意味でUNを無視することはできない。本研究では,従来足も頻繁に言及がなされ論議が交されてきたところのsubset effectとsimilarity effectという2つの現象を取り上げ,それらがUNについてどのような形で現われてくるかを検討した。 3レベルの論理的階層構造を持つ生物語群を用いて,UAとUNをそれぞれ152個作成した。これらの刺激命題はCRTディスプレイ上に視覚刺激として提示された。それらの真偽判断に要した反応時間(RT)と反応の正誤が測定・記録された。また,命題を構成している2つの刺激語(主語と述語名詞)について,意味的関係性と典型性とが評定尺度法によって測定された。被験者は12名の大学生,大学院生である。 得られた主な結果は次のとうりである。 1. UAについてもUNについても,一部の事例を除き,従来指摘されてきたようなsubset effectは認められず,全体としてはむしろ逆の傾向が優勢に現われた。この結果については,刺激カテゴリー間の補集合関係と,Meyer (1970)のset-theoreticモデルに類似した処理モデルとから解釈が試みられた 。 2. 関係性及び典型性とRTについての回帰分析の結果,UAについては,従来繰り返し指摘されてきた通りのsimilarity effectが存在することが確かめられた。また,UNについては,UAと同じパターンのsimilarity effectが現われることが明らかにされた。しかし,当初の予想とは異なって,UNのパターンはUAのパターンが一律に崇上げされたものではなく,UAとUNのRTの差はsubsetよりもdisjointの場合の方で大であった。この交互作用を説明するため,「であるベース」と「でないベース」という2種類の予測表象のうちいずれがあらかじめ喚起されるかに応じて,後続する認知処理の負担が異なることを仮定したモデルが提案された。
- 日本教育心理学会の論文
- 1980-09-30
著者
-
本郷 一夫
東北大学大学院教育学研究科
-
鈴木 敏明
東北大学大学院教育学研究科教育心理学
-
柴田 幸一
静岡大学教育学部
-
柴田 幸一
静岡大学
-
本郷 一夫
東北大学大学院教育学研究科教育心理学
-
本郷 一夫
東北大学大学院教育学班究科
関連論文
- 「気になる」幼児の発達の遅れと偏りに関する研究
- 集団適応に困難さをかかえる児童とその支援に関する研究--小学校1年〜3年の学級担任への調査から
- 発達障害のある子どもの対人関係支援法の探求(2) : 情動認知から支援へ(自主シンポジウム21,日本特殊教育学会第46回大会シンポジウム報告)
- 自主シンポジウム4 乳幼児保育の場における発達援助の専門性 : 発達援助の主体としての保育所・幼稚園
- 教授・学習5(631〜638)(部門別研究発表題目・質疑応答・討論の概要)
- 発達障害児者のパーソナリティをふまえた発達支援をいかに行うか(日本臨床発達心理士会企画シンポジウム)
- 保育の場における発達援助の専門性を考える
- 学級担任が「気になる」児童生徒についての調査研究(2) : 京都府の中学校学級担任への調査から
- 学級担任が「気になる」児童生徒についての調査研究(1) : 京都府の小学校学級担任への調査から
- PE025 幼児における「動き」の描画表現 : 移動中の「隠れ」に関する表現
- PB029 幼児のルール遊びにおける他者視点行動の発達的変化
- PA014 中学・高校における「気になる」生徒の理解と対応4 : 中学校における学年別・診断名の有無による特徴
- PA013 中学・高校における「気になる」生徒の理解と対応3 : 高校における診断名の有無・課程による特徴
- 高校における「気になる」生徒の理解と支援に関する研究
- PG1-09 「気になる」子どもの保育支援に関する研究23 : ルール遊びとコーナー遊びの成立(発達)
- 特別支援教育における幼小連携を考える(日本臨床発達心理士会主催シンポジウム1)
- PG1-08 「気になる」子どもの保育支援に関する研究22 : 「気になる」子どもの行動チェックリストの縦断的変化(発達)
- PG1-07 「気になる」子どもの保育支援に関する研究21 : 「気になる」子どもの発達的特徴に関する検討(発達)
- PC011 「気になる」子どもの保育支援に関する研究17 : クラス集団の変化と保育環境の関連
- PC010 「気になる」子どもの保育支援に関する研究16 : 保護者支援チェックリストの変化と補足版の活用
- PC009 「気になる」子どもの保育支援に関する研究15 : 保育者間の認識差の変化について
- 多動・衝動傾向がある子どもに対する環境構成のあり方
- 発達21(352〜360)(部門別研究発表題目・質疑応答・討論の概念)
- 発達7(248〜257)(部門別研究発表題目・質疑応答・討論の概要)
- 乳幼児保育における発達援助の専門性 : 質の向上へ向けての個別的・具体的援助のあり方
- 発達4(230〜241)(部門別研究発表題目・質疑応答・討論の概要)
- 保育の場における発達援助を問い直す
- 保育・教育における発達アセスメント : 発達援助の長期的見通しをもつために(保育・教育における発達アセスメント : 発達援助の長期的見通しをもつために)
- 乳幼児保育の場における発達援助の専門性
- 3歳児健康診査におけるフォローアップ児の特徴に関する研究 : 1歳6か月児健康診査, 3歳児健康診査時における問診票と簡易発達検査との関連
- 鳴門市の1歳6カ月検診の改善に関する研究 : 全検診児に対する「簡易発達検査」の導入結果を中心に
- 1歳6か月検診の改善に関する研究(1) : 鳴門市における問診票の改訂について
- 保育所における「気になる」子どもの行動特徴と保育者の対応に関する調査
- PA31 ADHD傾向を持つ子どもの保育に関する研究 (1)
- PD29 「環境移行」が幼児の仲間関係に及ぼす影響(6) : 保育所間の移行と保育所内の移行との比較
- 発達 K-2 「環境移行」が幼児の仲間関係に及ぼす影響(4) : 移行前の「仲良し」関係のタイプによる分析
- 発達 K-1 環境移行が幼児の仲間関係に及ぼす影響(3) : 移行にともなうやりとりの内容の変化を中心に
- 「環境移行」が幼児の中間関係に及ぼす影響(1)
- K366 保育所におけるサッカーの巡回指導に関する研究8 : 保育者評定とゲームへの参加度との関連に着目して(口頭セッション60 保育と支援)
- K365 保育所におけるサッカーの巡回指導に関する研究7 : 運動強度とゲームへの参加度との関連に着目して(口頭セッション60 保育と支援)
- 学習・教育を支えるコミュニケーションの基礎的研究 : 好悪感情を中心に
- 発達(201〜209)(部門別研究発表題目・討論の概要)
- PE38 幼児の他者の意図推測における情報利用に関する研究(発達,ポスター発表E)
- 12 児童期の各種発達の相互関連について : 論理、自己意識、創造性、道徳性の発達遅滞・障害(自主シンポジウム)
- K137 幼児期における運動協応の発達2 : 「気になる」子どもの運動発達の特徴(口頭セッション23 気になる子)
- 幼稚園における3年保育の現代的意義と課題(3) : 子どもの遊びと仲間関係について
- 幼稚園における3年保育の現代的意義と課題(2) : 幼稚園創設期からの歴史的研究
- 発達障害児の「自己」の発達と教育・支援(4) : 自己調整の発達と障害(自主シンポジウム59,日本特殊教育学会第45回大会シンポジウム報告)
- 子どもの自己コントロールの育ち
- 子どもの自己コントロールの育ち
- 27 臨床発達的支援の評価をめぐって(自主シンポジウム)
- 学習・教育を支えるコミュニケーションの基礎的研究 : 「集団」のコミュニケーションを中心に
- 統合保育の課題(自主シンポジウム 8)
- 「統合」保育に対する保育者の意識に関する研究 (2) : 米国ニューヘイブン市の現状
- 子ども間のトラブルに対する保母の働きかけと意図に関する研究 : トラブルの内容に基づく保母の対応の違いと個人差を中心に
- 保育者の異文化理解とオープン・マインド
- 「統合」保育に対する保育者の意識に関する研究 (1) : 鳴門市の保育所における現状
- 子ども間の関係を媒介する保母の働きかけに関する研究 : トラブル場面における子どもの拒否・NRの分析
- 児童誘拐問題に関する社会・発達心理学的研究 (続)
- 母親のChild Rearing Burnoutに関する基礎的研究 (第2報)
- K140 「気になる」児童のチェックリストと心理尺度Q-Uとの関連(口頭セッション23 気になる子)
- 「気になる」児童の行動変容と支援との関連--「気になる」児童のチェックリストと心理尺度「Q-U」を通して
- 308 登園児の母子分離による不安反応の生起について(発達12,発達)
- 209 水面の水平性概念の習得状態に関する一調査(200 発達)
- 841 聴覚障害児と母親の相互作用の発達に関する研究(その2)(臨床・障害5,臨床・障害)
- 840 聴覚障害児と母親の相互作用の発達に関する研究(その1)(臨床・障害5,臨床・障害)
- 単純全称命題の評価と意味記憶の関係について
- 634 弁別移行学習における次元性について(教授学習5,研究発表)
- 324 Semantic Memoryに関する研究(2) : SD dataからのRTの予測(発達17,研究発表)
- 323 Semantic Memoryに関する研究(1) : 関係性と典型性からRTの予測(発達17,研究発表)
- 幼児における空間的量を表わす形容詞対の獲得について
- PD01 幼児の仲間関係の形成における「身体接触」の役割(発達,ポスター発表D)
- 発達17(320〜327)(部門別研究発表題目・質疑応答・討論の概要)
- 284 保育所における乳幼児のトラブルについて(6) : 1歳児クラスにおけるトラブルについて(乳幼児の対人トラブル,発達14,口頭発表)
- 283 保育所における乳幼児のトラブルについて(5) : トラブルに対する保母の働きかけについて(乳幼児の対人トラブル,発達14,口頭発表)
- 282 保育所における乳幼児のトラブルについて(4) : 子ども間のトラブルの成立と展開について(乳幼児の対人トラブル,発達14,口頭発表)
- 4C-4 保育所における乳幼児のトラブルについて(3) : トラブルに対する保母の働きかけについて(発達4C)
- 4C-3 保育所における乳幼児のトラブルについて(2) : 子ども間のトラブルの成立と展開について(発達4C)
- 4C-2 保育所における乳幼児のトラブルについて(1) : 物の所有と使用をめぐるトラブルを中心に(発達4C)
- 288 集団保育における心理的拠点の形成〔II〕 : 保育者の意識の分析から(集団保育,他,発達10,発達)
- 359 乳児の社会的相互作用の発達(4) : 保母の発話の分析(乳幼児の社会的相互作用,発達)
- 乳児の仲間関係の発達 : その2(「乳幼児」分科会)
- 乳児の仲間関係の発達 : その1(「乳幼児」分科会)
- 252 乳児の社会的相互作用の発達(3) : 相互作用系列の分析(発達7,発達)
- 251 乳児の社会的相互作用の発達(2) : 行動カテゴリーの分析(発達7,発達)
- 250 乳児の社会的相互作用の発達(1)(発達7,発達)
- PG20 幼児の社会性の発達に関する研究(4)(発達,ポスター発表G)
- 幼児の社会性の発達に関する研究(3)
- PG27 幼児の社会性の発達に関する研究 (2)
- 261 乳幼児の相互作用を媒介する保母の働きかけについて(2)(保育行動,発達7,発達)
- 260 乳幼児の相互作用を媒介する保母の働きかけについて(1)(保育行動,発達7,発達)
- 「特殊教育学」の更なる広がりと深化をめざして(I) : 特別支援教育時代の「特殊教育学」の役割と関連科学・領域からの期待と提言(学会企画シンポジウム,日本特殊教育学会第48回大会シンポジウム報告)
- 自閉症児における社会性支援の課題と展望(III) : 授業によって社会性の土台としての「他者とのかかわりの基礎」をどう育てるか?(自主シンポジウム13,日本特殊教育学会第48回大会シンポジウム報告)
- 「気になる」児童の学級集団適応に関する研究--「気になる」児童のチェックリストとhyper-QUを通して
- 3歳未満児保育における心理的拠点の形成 : 保育体制と保育者の意識の分析
- 3歳未満児保育における心理的拠点の形成 : 子ども"なれ"の過程と保育体制とのかかわり
- PA026 「気になる」子どもの保育支援に関する研究6 : 子どもの行動チェックリストについて(ポスター発表A,研究発表)
- PF009 保育所におけるサッカーの巡回指導に関する研究1 : ゲームとコーディネーションにおける変化(ポスター発表F,研究発表)
- PF010 保育所におけるサッカーの巡回指導に関する研究2 : 保護者・保育者による質問紙の評定変化(ポスター発表F,研究発表)
- PF011 保育所におけるサッカーの巡回指導に関する研究3 : 質問紙とゲーム、コーディネーションとの関連(ポスター発表F,研究発表)