イネにおける低硝酸還元酵素活性突然変異体の選抜
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概要
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農業生物資源研究所放射線育種場において選抜され,維持されているイネ突然変異系統(原品種,農一林8号)を用いて,塩素酸カリウム抵抗性指標とした硝酸還元酵素(NR)欠失突然変異体のスクリーニングを試みた.各系統の種子を播種時より0,10^-1`,および10^-3Mの塩素酸カリウム溶液で生育させた.播種後14日目における幼植物の草丈抑制程度ならびに葉の褐変斑の大きさにより可視的に塩素酸カリウム抵抗性、の評価を行い,抵抗性程度をR(抵抗性),R'(弱い抵抗性),S(感受性)ならびにR/S(抵抗性個体が系統内に分離)に分類した.その結果,調査した437系統のうち,M819,M821,M1004ならびにM1009の4系統が塩素酸カリウム抵抗性(R)と認められた.またR'として15系統が,R/Sとして6系統が認められた(Table1).次に塩素酸カリウム抵抗性4系統と農林8号の幼植物を0〜10^-3Mの塩素酸カリウム溶液で生育させ,抵抗性の程度を再度調査した.M819とM821は草丈の抑制程度と葉の褐変斑の大きさの双方の基準から明瞭な'塩素酸カリウム抵抗性を示した.一方,MlO04は草丈からは最も抵抗性を示したが葉には禍変斑.が認められた.またM1009はM819,M821と農林8号のほぼ中間の草丈抑制程度であった(Fig.1,Fig.2).播種後20日目の幼植物の葉におけるin vitroNR活性を調べたところ,M819とM821のNR活性は原品種の30%以下であり,両系統は低NR活性突然変異体であると判定された.一方,M1009のNR活性は原品種の約80%てあり,M1004では原品種と同程皮であることが明らかになった(Table 2).塩素酸カリウム抵抗性は硝酸吸収欠損突然変異の指標としても有効である.4系統の硝酸吸収は農林8号と同程度あるいはそれ以上であり,吸収欠損突然変異体ではなかった.(Table 3).NRは植物の硝酸代謝において最も重要な役割をはたす酵素であり,その機能ならびに遺伝子支酉己の解明は,効率的な硝酸代謝を行なう作物育成の基礎として重要である.この解決にはNRにかかわる多様な突然変異の利用が有効であるので,本実験で明らかになった系統についてNRの遺伝生化学的調査を行なっている.
- 日本育種学会の論文
- 1991-03-01
著者
-
片桐 豊雅
Otsuka Pharmaceutical Ltd.
-
長谷川 博
大阪府立大学付属研究所
-
矢頭 治
鹿児島県農業試験場
-
矢頭 治
農業生物資源研
-
一井 真比古
香川大学農学部
-
長谷川 博
滋賀県立大学環境科学部
-
片桐 豊雅
香川大学農学部
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