ユリおよびストックの光依存的なアントシアニン合成における光受容体と糖の役割について
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概要
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弱光下において花が着色不良を起こすメカニズムとして1)花弁に存在する光受容体を介した反応, 2)茎葉部からの糖の供給の減少による反応の二通りが考えられる.本研究では, いずれの要因がより重要であるのかをオリエンタル系ユリ'アカプルコ'とストック'ピグミーローズ'を用いて調べた.花のみを寒冷紗(PPFD<17μmol・m^<-2>・sec^<-1>)またはアルミホイル(PPFD 0μmol・m^<-2>・sec^<-1>)により遮光した場合, いずれの植物でもアントシアニン濃度が低下した.この結果は, 花弁の光受容体を介した反応を示す.ユリでは, 植物体全体を寒冷紗によって遮光すると(PPFD<17μmol・m^<-2>・sec^<-1>), 花のみを寒冷紗で遮光した場合よりさらにアントシアニン濃度が低下した.花被の全糖濃度は無処理区で3%であったのが, この処理によって1.6%まで低下した.従って, 糖の供給不足もまた, ユリのアントシアニン合成を抑制することを示した.それに対してストックでは, 植物体全体の遮光処理の効果は, 花のみの遮光処理の効果と差がなかった.従って糖の供給不足はアントシアニン合成の制限要因ではないと考えられた.花弁の全糖濃度は植物体全体遮光処理によって4.7%から3.7%まで低下したが, この濃度はユリの遮光区における全糖濃度より高かった.ストックの小花を花梗部で切り離し, スクロース溶液に入れて開花させたところ, 花弁中のヘキソース濃度が2%を下回るとアントシアニン濃度の低下がみられた.これらの結果は, ストックにおいても花弁中の糖濃度はアントシアニン合成に影響するものの, 弱光下における糖濃度が高いために着色低下を防いでいることを示す.
- 園芸学会の論文
- 2002-03-15
著者
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丸山 浩史
東京大学大学院農学生命科学研究科
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河鰭 実之
東京大学大学院農学生命科学研究科
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李 玉花
東北林業大学園林学院
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安達 めぐみ
東京大学大学院農学生命科学研究科
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小沢 絵里香
東京大学大学院農学生命科学研究科
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崎山 亮三
東京大学大学院農学生命科学研究科
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安達 めぐみ
東京大学大学院農学生命科学研究科:(現)東京農業大学農学部
-
小沢 絵里香
東京大院農学生命科学研究科
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李 玉花
東北林業大生命学院
-
崎山 光三
東京大学大学院農学生命科学研究科
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