花木ボケ類の不ねんに関する細胞学的観察
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
(1) ボケ類にひろくみられる不結実性を明らかにして今後の育種上の知見をうるために市販品種15点および野生種クサポケを用い,数年にわたってフレーム内で素焼鉢作りとして,花粉および胚のう形成について若干の細胞学的観察をおこなった。 (2)開花時期および茎状のちがいによって供試材料を寒咲型(6点)・春咲型(6点)およびクサボケとその類似型(4)点とに区別し,それぞれの根端における染色体数を調査したが,すべて2n=34の二倍体であることが確認された。 (3)花粉母細胞にあらわれた減数分裂像をみると,IMにおいて17_<II>が規則正しく形成される緋の御旗や東洋錦などがみられた反面,黒光・緋赤寒ぼけ・長寿楽などではかなり混乱した染色体対合が観察され,1価や4価染色体も多く現われていた。つづくIIMにおいても後者のものでは異常な分裂が顕著におこっており,四分子期にも奇形の二〜三分子,さらに五〜九分子にいたるものが散見された。 (4) したがって,開花時の充実花粉粒率も前記の異常分裂の傾向と大むね軌を一にしてあらわれており,黒光や長寿楽ではほとんど健全粒の形成がみられなかった。一方舞妓・浪花錦・長寿梅(白花)のようにきわめて良好な健全粒率を示すものもあったが,それらでも完全な果実の着生がみられなかった。 (5)数点の品種について解剖的に観察された胚のう形成については,一般に開花2日前の完全花で比較的多くの健全な卵装置をもつ胚のうが完成しており,その後受粉受精をうけたか否かは不明であるが,約2週間はそのままの状態で存在し,その後しだいに退化崩壊がはじまり,ついに原胚の発生を示す標本をうることはできなかった。一方,クサポケにおけるわずかの標本では受精によって生じた原胚がしだいに細胞分裂をはじめ,開花後2〜3週間目でようやく小さな棍棒状を呈するものが観察された。 (6) ボケ類に普通にあらわれる不結実の原因として,品種成立の過程にからんでいる雑種性による遺伝的な配偶体および接合体の致死,自家および他家不和合現象の存在,さらに限界的な低温などによる環境的要素などが組みあわされているものと考察された。
- 日本育種学会の論文
- 1975-04-30
著者
関連論文
- 花卉育種における倍数体の領域とその利用性に関する研究 : 第2報カンナ育種における倍数性品種の役割について
- 雑種花粉評価のための色指標の提案
- B. rapa 1染色体添加型ダイコン(2n=19)における小粒種子の莢内位置と添加型ダイコンの出現率
- Moricandia arvensis (C_3-C_4植物)二染色体添加型ダイコンの作出とそれらの葉構造と光呼吸特性
- Diplotaxis tenuifolia (C_3-C_4植物)とBrassica Oleracea (C_3植物) との属間雑種植物の作出およびそれらの葉断面構造と光呼吸特性
- アブラナ科属間体細胞雑種(Moricandia arvensis+Brassica oleracea)後代の葉断面構造の比較
- 71 Diplotaxis tenuifolia (C_3-C_4中間型)とダイコン(C_3型)から作出した様々なゲノム構成をもつ交雑植物の葉の内部構造
- Diplotaxis tenuifolia(C_3-C_4中間型)とダイコン(C_3型)から作出した様々なゲノム構成をもつ交雑植物の光合成特性と光呼吸酵素の細胞間蓄積様式
- 交雑育種法における花粉の画像計測量の提案
- 23 Diplotaxis tenuifolia (C_3-C_4中間型)、ダイコン(C_3型)、及びそれらの属間交雑植物の葉構造と光合成・光呼吸特性
- ヒガンバナ亜科に属する花卉類の核型およびRAPD マーカーからみた類縁性
- Moricandia arvensis と Brassica oleracea の体細胞雑種の花粉培養
- ダイコン 1 染色体添加型Brassica maurorum (2n=17) 系統の育成
- Brassica rapa L. × Moricandia arvensis DC. の雑種植物の作出
- Brassica rapa 1染色体添加型ダイコン(2n = 19)の継代維持
- Diplotaxis tenuifolia8C_2-C_4 植物)とダイコン(C_3 植物)との属間雑種植物の後代について
- Moricandia arvensis 染色体添加型カンラン系統の育成
- RAPDマーカーによるボケ類(Chaenomeles属)の分類
- Brassica fruticulosa Cyr. ssp. mauritanica(Coss.) Maine. と Raphanus sativus L.との人為合成複二倍体植物の細胞遺伝学的安定性と稔性
- 花卉育種における倍数体の領域とその利用性に関する研究 : XII.ロードヒポクシスにみられる自然三倍体品種の性状と不ねん性について
- 花木ボケ類の不ねんに関する細胞学的観察
- 花卉育種における倍数体の領域とその利用性に関する研究 : XI.アキメネスの最近市販品種にみられる倍数性ならびに不ねん機構について
- 花卉育種における倍数体の領域とその利用性に関する研究 : X.ゼフィランテスおよびハブランサス両属にまたがる倍数性と種の分化について
- 花卉育種における倍数体の領域とその利用性に関する研究 : IX.夏咲型四倍性グラジオラス市販品種のねん実不良についての細胞学的観察
- 花卉育種における倍数体の領域とその利用性に関する研究 : 第8報 ゼラニウム、ペラルゴニウム類にみられる自然倍数性と稔実性について
- 花卉育種における倍数体の領域とその利用性に関する研究 : 第7報 ムスカリ園芸種にみられる自然倍数性と系統進化について
- 花卉育種における倍数体の領域とその利用性に関する研究 : 第6報 イキシアの市販品種にみられる自然倍数性について
- 花卉育種における倍数体の領域とその利用性に関する研究 : 第5報 オキザリスの市販品種にみられる自然倍数性と不稔性について
- (48) 球・宿根性花卉における倍数性品種の検出とその育種的利用に関する研究 IX.ムスカリ属の倍数性について : 日本育種学会第29回講演会講演要旨 : 一般講演
- 花卉育種における倍数体の領域とその利用性に関する研究 : 第4報 ジンジャーの最近品種にみられる倍数性について
- (49) 放射線処理による花卉突然変異の誘起とその育種的利用に関する研究III. 1・2年草にみられる照射線量の増大に対応する相対生存率の種類別低下について : 日本育種学会第25回講演会講演要旨 : 一般講演
- 花卉育種における倍数体の領域とその利用性に関する研究 : 第3報 フリージァ品種間交雑によつてえられた低三倍体植物の特性とその生物学的意義
- (24) 紫花菜の細胞・育種学的研究 I. 紫花菜の性状と変異作出実験 : 日本育種学会第24回講演会講演要旨 : 一般講演
- (27) 北関東におけるラジノクローバの採種適地選定に関する調査研究 : 日本育種学会第23回講演会講演要旨 : 一般講演
- 〔59〕Ginger Lily最近品種における倍数性と稔実性について : 日本育種学会第21回講演会講演要旨 : 一般講演
- 花卉類の倍数性育種
- 花卉育種に着ける倍数体の領域とその利用性に関する研究 : 第1報フリージア育種における倍数性品種の役割について
- 〔62〕球・宿根性花卉における倍数性品種の検出とその育種的利用に関する研究 第5報 クロッカスの倍数性について : 日本育種学会第17回講演要旨 : 一般講演
- カンラン類1染色体添加型ダイコンの遺伝・育種学的評価(1) : 数種類の添加型ダイコンが持つ形質の他のダイコン品種およびカブでの発現
- カンラン類1染色体添加型ダイコンのγ線種子照射による転座型ダイコンの育成
- カンラン類1染色体添加型ダイコンの種子による継代維持
- カンラン類一染色体添加型ダイコンにおけるカブモザイクウイルス(TuMV)抵抗性遺伝子の同定と評価
- Brassica属A,BおよびCゲノム3種(B.campestris, B.nigra, B. oleracea)の異種染色体添加型植物の育成
- アブアナ科植物の遠縁交雑と遺伝・育種学的利用
- Brassica maurorum Durieu.とRaphanus sativus L.との人為合成複二倍体植物の細胞遺伝学的安定性と稔性
- カンラン類一染色体添加型ダイコンを用いた添加染色体のダイコン栽培品種への導入
- Brassica maurorum Durieu.とRaphanus sativus L.との人為合成複二倍体植物の細胞遺伝学的安定性と稔性
- カンラン類一染色体添加型ダイコンを用いた添加染色体のダイコン栽培品種への導入
- ダイコンとBrassica属野生種との新しい属間雑種植物の作出
- 引用文献(カンラン類一染色体添加型ダイコンの育成とその利用に関する細胞遺伝・育種学的研究)
- 謝辞(カンラン類一染色体添加型ダイコンの育成とその利用に関する細胞遺伝・育種学的研究)
- 摘要(カンラン類一染色体添加型ダイコンの育成とその利用に関する細胞遺伝・育種学的研究)
- 第7章総合考察および結語(カンラン類一染色体添加型ダイコンの育成とその利用に関する細胞遺伝・育種学的研究)
- 第6章γ線種子照射によるカンラン類一染色体添加型ダイコン(2n=19)からの転座型ダイコンの育成とその後代植物(カンラン類一染色体添加型ダイコンの育成とその利用に関する細胞遺伝・育種学的研究)
- 第5章カンラン類一染色体添加型ダイコン(2n=19)のモザイク病抵抗性とγ線種子照射感受性遺伝子が座乗する染色体の解析(カンラン類一染色体添加型ダイコンの育成とその利用に関する細胞遺伝・育種学的研究)
- 第4章カンラン類一染色体添加型ダイコン(2n=19)の遺伝・育種学的評価(カンラン類一染色体添加型ダイコンの育成とその利用に関する細胞遺伝・育種学的研究)
- 第3章カンラン類一染色体添加型ダイコン(2n=19)の維持(カンラン類一染色体添加型ダイコンの育成とその利用に関する細胞遺伝・育種学的研究)
- 第2章カンラン類一染色体添加型ダイコン(2n=19)の育成(カンラン類一染色体添加型ダイコンの育成とその利用に関する細胞遺伝・育種学的研究)
- 第1章属間雑種植物Raphanobrassica(2n=36,RRCC)の育成(カンラン類一染色体添加型ダイコンの育成とその利用に関する細胞遺伝・育種学的研究)
- 序章(カンラン類一染色体添加型ダイコンの育成とその利用に関する細胞遺伝・育種学的研究)
- レジュメ(カンラン類一染色体添加型ダイコンの育成とその利用に関する細胞遺伝・育種学的研究)
- アブラナ科植物における遠縁交雑の遺伝・育種学的利用
- ダイコンとSinapis層との属間雑種植物の作出とそれらの細胞遺伝学的観察
- [59]同質4倍体性花卉の稔実性に関与する日長効果の影響について : 日本育種学会第14回講演会講演要旨
- [24]宿根・球根性花卉における倍数性品種の検出とその育種的利用に関する研究 : II.ガーベラ,ゼラニウムおよびペラルゴニウムについて : 日本育種学会第13回講演会講演要旨 : 一般講演要旨
- 同質4倍性花菱草の後代に現れた半数体について
- 二三ウリ類の倍数体育成と利用に関する研究 第3報 : アメリカ系西瓜品種並びに夕顔類の倍数体について
- 二三ウリ類の倍数体育成と利用に関する研究第2報 : つるれいしの倍数体について
- コスモスにおける丁字型八重咲性の性状とその採種法に関する研究
- 1.丁字咲八重コスモスの採種法に関する研究 : 第2報八重咲率向上の実用的限界及びポンポン型八重咲株の出現とその利用 : 日本育種学会第六回講演要旨
- 7.新らしく育成された黄花コスモスの4倍体半八重大輪咲系統の性状について : 日本育種学会第五回講演要旨
- 9.丁字咲八重コスモスの採種法に関する研究 : 1.丁字咲八重性の一般的性状 : 日本育種学会第四回講演会要旨
- 二,三ウリ類の倍数体育成と利用に関する研究 第1報 : ヘチマの倍数体について
- 人為倍数性花卉に現われる實用形質の変化とその利用性
- 1.二三ウリ類の倍数体育成と利用に関する研究(第1報) : ヘチマ倍数体について : 日本育種学会第1回講演要旨
- 倍数性花卉の育成と利用に関する研究(第9報) : 新らしく育成された黄花コスモスの4倍性大輪半八重咲系統の性状について
- 花きにおける放射線変異の作出とその育種的利用に関する研究 : (第2報)ウォールフラワーにあらわれた半八重咲およびモス=バーベナにあらわれた白色花系統について
- 同質4倍性花卉の利用と稔実の特異性に関する研究(第2報) : すいせんのう4倍体の形態的および稔実生理的特性について
- 同質4倍性花卉の利用と稔実の特異性に関する研究(第1報) : 大輪八重咲ペチュニアの育成とその稔実に関与する遺伝的及び環境的要因について
- 倍数性花卉の育成と利用に関する研究(第10報) : ひめさぼんそう,花菱草,コスモス及びすいせんのうの同質4倍体について
- 花卉における放射線変異の作出とその育種的利用に関する研究 (第1報) : 1•2年草類にあらわれた放射線感受性の差異と変異個体の出現
- カンラン類1染色体添加型ダイコンの育成
- 属間雑種植物ラファノブラシカの稔実性
- セイヨウナタネとカラシナとの正逆交雑によるBゲノム一染色体添加型ナタネの育成とその特性