花卉育種における倍数体の領域とその利用性に関する研究 : 第3報フリージァ品種間交雑によつてえられた低三倍体植物の特性とその生物学的意義

概要

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(1)Freesiaの市販品種,ことに四倍性系統を中心として交雑をおこない,若干の実生養成をおこなっている際に,濃黄色大輪咲四倍体 Golden Buttercupく2n=44)×濃黄色中輪咲二倍体 Super Giant Yellow(2n=22)より得られた1個体に2n=33-1の低三倍性のものが見出された。(2)この個体は生育がおそく細い淡緑色の葉がややよぢれ,`S1ender'のよび名を与えた。花は小さく5枚花被片で,花色は淡黄樺色を示した。葉面の表皮細胞は比較的小さく不規則に配列され,花粉粒は完全に退化崩壊して不稔である。(3)球根性花弁のうちで Begonia, Grocusなどの諸属には比較的強勢な異数体が存在しているが,その原因としては,それらを構成するゲノムがすでに複数状態でおのずから異質倍数体的組成をもつと共に長期間にわたる人為的淘汰によって致死的組合せも消滅Lて,十分な生機をもちうるものだけが維持されてきたものであろうということが推察される。これに対してFreesiaなど比較的成立が新しくかつ野生原種間におけるゲノムの同質性が顕著てしかも安定性が強いものと想像される種類こおいてはなお強勢な異数体の出現をみることはほとんど期待されたいものと考えられる。
日本育種学会の論文
1964-09-25