イネキチテーゼ遺伝子(Cht4)のゲノム配列と品種間多型
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概要
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イネ籾殻中の休眠関連タンパク質の探索過程で検出されたタンパク質(RHP)の解析から,これが既知のものとは異なる構造上の特徴をもつ新しいキチナーゼであること,また,この遺伝子は染色体4に座乗することが推定された(Nakazaki et al. 1997)。この解析は,ESTデータベースから検索された cDNAの部分配列を基に行っており,新規キチナーゼ遺伝子Cht4のコードするアミノ酸配列のC-末端構造等は不明であった。本報告では,TAlL-PCR法(Liuet al. 1995)を用い,cDNAの既知の部分塩基配列情報(632bp)を基にPCR操作のみによって,イネ品種日本晴の既知cDNA配列の隣接領域の増幅を試みた。その結果,上流約700bpおよび下流約300bpの領域の塩基配列を決定することができた。これによってCht4には,一つのイントロンがあることが明らかになり,また,C-末端領域のアミノ酸残基40が特定された。このC-末端のアミノ酸配列および構造は,クラスIVに分類されるキチナーゼと高い類似性を示し,既知の上流域の特徴と合わせ,このキチナーゼは,これまでイネで報告されてるクラスIキチナーゼとは異なる特徴をもつものであることが確認された。この遺伝子の上流域についても,これまでイネで報告されている特徴的なcis-配列は特定されず,発現の特異性が推定された。また,インディカ品種のCht4下流域においては,トランスポゾンの一つと考えられるWanderer配列の挿入が認められた。したがって,Cht4座はイネの系統分化解析の面からも有用な遺伝子座であることが示唆された。
- 日本育種学会の論文
- 1998-12-01
著者
-
中崎 鉄也
京都大学大学院農学研究科
-
池橋 宏
京都大学大学院農学研究科
-
中崎 鉄也
京都大学農学研究科
-
池橋 宏
京都大学大学院・農学研究科
-
Nakazaki Tetsuya
Graduate School Of Agriculture Kyoto University
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