パキスタン北部山岳地帯のアワの変異と分布
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概要
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パキスタン北部山岳地帯で収集されたアワの地方品種についてユーラシア全域の系統とともに栽培し(Table1),その特性調査を行った(Table2,Table3,Fig.2,Fig.3).その結果,パキスタン北部山岳地帯の71系統はその形質の組み合せによってチトラール群,バルディスタン群,ディール群の3群に分けることができた(Table4).チトラール群は草丈低く,旺盛に分げつし刺毛の長い短雄型の穂をつけた.これに対しバルディスタン群は非分げつ型で,主桿だけに刺モが短い円錐型の穂をつけた.一方,ディール群は中生から晩生で草丈高く,分けつ数も.多くその穂は長雄型であった、チトラール群およびディ一ル群では系葯はオレンジ色,稔実小花は楕円形で内外穎の表面に光沢があったのに対し,バルディスタン群では菊は白色,稔実小花は円形で光沢がなかった.また負のフェノール着色反応性を示す系統の頻度がチトラール群およびバルディスタン'群で高かった.ディール群では6系統中2系統が正の反応を,3系統が負の反応を示した.脱落性を示す系統がチトラール群でのみみつかった.これら3群の分布域は,チトラール群が北西辺境州のチトラール地方とギルギット地区.西部,バルディスタン群がフンザ地方とバルチスタン州,ディール群が北西辺境州のディールとベシャム付近とそれぞれ明瞭に分かれていた(Fig.1).また、興味深いことに現地調査で明らかになったアワの異なった呼称とこれら3群とが対応しており,各地域に特有の地方品棚が独自の呼称によって認識されながら現在まで維持されてきたと考えることができる、ユーラシア全域の系統との比較によって,チトラール群はアフガニスタンの系統,バルディスタン群は南アジアから東アジアにかけてのユーラシア東部の系統,ディール群はパキスタン南部とインド南部の系統とそれぞれ類似した特性をもつことが明らかになった.このことから,パキスタン北部山岳地榊の3群は互いに系統的に区別できるものでことがわった
- 日本育種学会の論文
- 1994-12-01
著者
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河瀬 眞琴
四国農試
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河瀬 眞琴
四国農業試験場作物開発部
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阪本 寧男
京都大学農学部附属植物生殖質研究施設
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阪本 寧男
龍谷大学国際文化学部
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落合 雪野
京都大学農学部附属植物生殖質研究施設
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阪本 寧男
京大植物生殖質研
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阪本 寧男
京都大学農学部
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