インド亜大陸に分布するSesamum mulayanaum NAIRの荒地雑草型・随伴雑草型とゴマ栽培種S.indicum L.の遺伝的関係
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概要
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Sesamum mulayanum NAIRはゴマ栽培種(S.indicum L.)の野生近縁種でインド亜大陸に分布する.ゴマの起源については諸説あるが, 栽培種はS.mulayanaumからインドで起源したという説が提出されている.著者はインド亜大陸における現地調査でS.mulayanaumの2種類の生態型すなわち荒地雑草型と随伴雑草型を観察, 収集した.荒地雑草型は花冠全体が濃いピンク色で辰弁の最も突き出た下側の裂片の濃い紫色が特徴的である.ゴマ畑で見出された随伴雑草型は荒地雑草型に比べ栽培種ほどではないが色が薄いなどいくつかの形質で栽培種によく似ていた.両者とも熟した〓果から容易に裂開して種子分散し, 種子は縁が鋭形で厚くしわのある種皮を持つ.本研究ではインドで収集したS.mulayanumの荒地雑草型および随伴雑草型と栽培種との交雑を試みた.F_1雑種は旺盛に生育し, 多くの形態的形質で両親の中間型を示した.荒地雑草型と栽培種とのF_1雑種では花粉の部分不稔性(約50%)と稔実種子数の明らかな減少が観察されたが, 随伴雑草型と栽培種とのF_1雑種は完全に正常な花粉稔性および種子稔性を示した.なお, 細胞遺伝学的な予備的調査では減数分裂の第1分裂中期の染色体に異常は観察されず, 染色体の大きな構造変化による雑種不稔性ではないこと, 部分不稔性は相反交雑で見出され細胞質による不稔性でもないことが示唆された.これらの結果から随伴雑草型は荒地雑草型に比べ形態的にも遺伝的にも栽培種に近縁であると結論できる.しかしながら, S.mulayanumとS.indicumとは互いに容易に交雑し完全な不稔性を示す雑種もないことから, 両者はプライマリー・ジーンプールを共有し, 同一の生物学的種に属すると考えられる.
- 2000-06-01
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