細粒質グライ土水田におけるたい肥および稲わら施用が土壌無機化窒素の動態に与える影響
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概要
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細粒質グライ土水田におけるたい肥および稲わら施用が土壌無機化窒素の固定化、脱窒、水稲吸収に与える影響についてトレーサーNH_4-^<15>Nを用いて検討した結果は次のとおりであった。1)土壌NH_4-Nの固定化割合は移植期に存在していたものが最も高く、次いで分けつ盛期、穂ばらみ期、幼穂形成期に存在していたものの順であった。移植期に存在していた土壌NH_4-Nの4週間後における現存有機化割合は有機物無施用の38%と比較してたい肥施用区で50~53%と高く、稲わら施用区でとくに稲わら1.2トンおよび1,8トン施用区で67および72%とさらに高かった。分けつ盛期に存在していたものの固定化割合は稲わら1.2トンおよび1.8トン施用区でやや高かった。しかし、幼穂形成期以後に存在していたものでは有機物施用の有無による相違がほとんどなかった。2)土壌NH_4-Nの水稲吸収割合は移植期に存在していたものが最も低く17~24%であり、次いで分けつ盛期、幼穂形成期、穂ばらみ期に存在していたものの順であり、水稲の窒素吸収能力が大きくなるにつれて高くなっていた。移植期に存在していたものでは有機物施用の各区でやや低かった。分けつ盛期に存在していたものでは稲わら1.2トンおよび1.8トン施用区でやや低かった。しかし、幼穂形成期や穂ばらみ期に存在していたものではたい肥2トンおよび3トン施用区でやや高かった。3)土壌NH_4-Nの脱窒割合は移植期に存在していたものではたい肥施用の各区でやや低く、稲わら0.6トン施用区で低く、稲わら1.2トンおよび1.8トン施用区でかなり低かった。分けつ盛期に存在していたものではたい肥施用の各区でやや高かったが、幼穂形成期や穂ばらみ期に存在していたものでは反対にたい肥2トンおよぼ3トン施用区でやや低かった。4)土壌無機化窒素の固定化、脱窒、水稲吸収への総移行量はたい肥3トン区>たい肥1トンおよび2トン区>有機物無施用区>稲わら施用の各区の順であった。これらは分けつ盛期から幼穂形成期にかけて各区に顕著な差がみられ、有機物無施用区の7.3gと比べてたい肥施用の各区で8.1~8.5gと大きく、稲わら施用の各区では0.6トン区6.0g、1.2トン区5.0g、1.8トン区3.6g/m^2と稲わら施用量の多い区で大きかった。土壌無機化窒素の総固定化量は有機物施用の各区で大きかった。土壌無機化窒素の総脱窒量は稲わら施用区で小さかった。土壌無機化窒素の総吸収量はたい肥施用量が多い区で大きく、稲わら施用量が多い区で小さかった。このように、たい肥と稲わら施用が土壌無機化窒素の動態に与える影響のなかで顕著な相違は、たい肥施用は固定化量、脱窒量、水稲吸収量とも増加するという増量効果として現れるが、稲わら施用は固定化量が多く、脱窒量および水稲吸収量が少なくなるという土壌の還元層の発達とともにみられる動きになることにある。
- 社団法人日本土壌肥料学会の論文
- 1988-04-05
著者
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