強粘質半湿田とその乾田化水田における土壌窒素の無機化とその有機化,脱窒および水稲による吸収
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概要
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土壌有機態窒素からの無機化量の定量に同位体トレーサー法を適用し, 強粘質半湿田とその乾田化水田の窒素無施用区において, 土壌有機態窒素の無機化とその有機化, 脱窒および水稲吸収について検討した結果は次のとおりであった. 1. ある期間Tj (これは順にt_< j0 >, t_< j1 >, ・・・ , t_< ji >, ・・・, t_< jnj > 時から成り立っている) における土壌無機化窒素量の求め方は次のとおりである. まずt_< ji > 時のNH_4-N総量をN_< ji >, t_< j0 < 時にあったNH_4^<14 > Nのt_< ji <時の量を^< 14 > N_< j0i >, t_< j0 > 時に施用したトレーサーNH_4-^< 15 > Nのt_< ji > 時の量を^< 15 > N_< ji >, この期間に土壌有機態窒素からたえず無機化しているNH_4-Nのt_< ji > 時における存在量N_< sji >, t_< ji-1 > 時からt_< ji > 時にかけて無機化してきたNH_4-Nをa_< ji >, このときそれぞれのNH_4-Nの減少率をα_< ji > とする. すると, a_< ji >はt_< jnj > 時にはa_< ji > (1-α_< ji+1 >) (1-α_< ji+2 >) ・・・ (1-α_< jnj >) となるので, N_< sji >=a_< ji > +a_< ji-1 > (1-α_< ji >) +a_< ji-2 > (1-α_< ji-1 >) (1-α_< ji >) +・・・+a_< ji > (1-α_< j2 >) (1-α_< j3 >) ・・・ (1-α_< ji >). また, N_< sji >=N_< ji >- (^< 14 >N_< joi >+^< 15 > N_< ji >) = N_< ji >- (^< 14 > N_< j0i > +^< 15 > N_< ji >) = N_< ji > - (^< 15> N_< ji >/^< 15 > N_< j0 >) N_< j0 >であるので, 各t_< ji > 時に次の式が成立する. a_< ji > + a_< ji-1 > (1-α_< ji >) + a_< ji - 2 > (1-α_< ji - 1 >) (1-α_< ji >) +・・・+ a_< j1 > (1-α_< j2 >) (1-α_< j3 >)・・・(1-α_< ji >) =N_< ji >- (^< 15 > N_< ji >/^< 15 > N_< j0 >) N_< j0 > ・α_< ji > = (^< 15 > N_< ji-1 > - ^< 15 > N_< ji >)/^< 15 > N_< ji-1 > であるので, T_j期間における土壌有機態窒素からの無機化量M_< inj > およびその近似値M^ ^^_< jnj > は次式によって与えられる. [numerical formula] 2. 水田土壌中の現存NH_4-Nは6月中旬から7月初旬にかけて半湿田区がやや多かったが, 7月下旬からは乾田化水田区がやや多かった. 3. 水田土壌中の有機態窒素の無機化量は移植期から登熟中期にかけて半湿田区22.0g, 乾田化水田区25.2g/m^2であった. その速度は移植期から分けつ盛期にかけて次第に大きくなり, それからは穂揃期まで同じような大きい値で経過し, 穂揃期以後は急に小さい値になっていった. その速度は分けつ盛期から穂ばらみ期にかけて乾田化水田区のほうが大きかった. 4. 土壌無機化窒素の有機化量は移植期から登熟中期にかけて半湿田区, 乾田化水田区とも11.8g/m^2であった. その速度は幼穂形成期までは乾田化水田区のほうが大きかったが, 穂ばらみ期からは半湿田区で大きかった. 5. 無機化窒素の脱窒量は移植期から登熟中期にかけて半湿田区5.45g, 乾田化水田区7.34g/m^2であった. その速度は幼穂形成期から出穂期にかけて乾田化水田区のほうが大きかった. 6. 無機化窒素の水稲吸収量は移植期から登熟中期にかけて半湿田区5.25g, 乾田化水田区6.43g/m^2であった. その速度は幼穂形成期までは両区ほとんど相違がなかったが, それ以後は乾田化水田区のほうが大きかった.
- 社団法人日本土壌肥料学会の論文
- 1987-06-05
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