細粒質強グライ土水田における土壌無機化窒素の動態と堆肥6年連用との関係
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概要
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細粒質強グライ土水田における堆肥6年連用が土壌無機化窒素の固定化,脱窒,水稲吸収に与える影響についてトレーサーNH_4-^<15>Nを用い検討した結果は次の通りであった。1)土壌現存NH_4-Nの固定化割合は移植期に存在していたものが最も高く,次いで分けつ盛期,幼穂形成期,穂揃期に存在していたものの順であった。これらは,穂揃期に存在していたものをのぞいて,堆肥2トンおよび3トン区で高いという傾向であった。2)土壌現存NH_4-Nの水稲による吸収割合は移植期,分けつ盛期,幼穂形成期と水稲の窒素吸収能力が大きくなるにつれて高くなった。幼穂形成期と穂揃期では両者にあまり相違がなかった。各期に存在していた土壌NH_4-Nの水稲吸収割合は無堆肥区に比べて堆肥施用の各区で高いという傾向であった。3)土壌現存NH_4-Nの脱窒割合は各時期とも無堆肥区に比べて堆肥施用の各区で低かった。かつ,分けつ盛期以後は堆肥施用量が多い区ほどその脱窒割合は低かった。4)土壌無機化窒素の固定化,脱窒,水稲吸収への総移行量は堆肥3トン区≒堆肥2トン区>堆肥1トン区>無堆肥区の順であった。各期間別の移行量は移植期から分けつ盛期にかけては堆肥1トン区は無堆肥区と同じであったが,堆肥2トンおよび3トン区は無堆肥区よりやや大きい程度であった。分けつ盛期から幼穂形成期にかけては堆肥施用の各区は無堆肥区のそれに比べて1.5倍程度多かった。しかし,幼穂形成期以後は各区とも同じようであった。土壌無機化窒素の総固定化量は堆肥2トンおよび3トン区で大きく,次いで堆肥1トン区,無堆肥区の順であった。無堆肥区のそれは堆肥2トンおよび3トン区の6割程度であった。土壌無機化窒素の総吸収量は堆肥3トン区>堆肥2トン区>堆肥1トン区>無堆肥区の順であった。土壌無機化窒素の総脱窒量は無堆肥区>堆肥1トン区>堆肥2トン区>堆肥3トン区の順であった。5)堆肥連用が進むと,堆肥施用量の増加に伴って,土壌無機化窒素の固定化割合は高まり,脱窒割合は低くなるという土壌の窒素富化にとって効率のよい動きを示した。また,作土中の全窒素もそれとともに増加し,連用6年目では無堆肥区に対して堆肥1トン区は14%,2トン区は22%,3トン区は25%の増加であった。
- 社団法人日本土壌肥料学会の論文
- 1986-12-05
著者
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