インキュベーションおよび圃場における地力窒素の動態と水稲窒素吸収量予測
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概要
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^<15>N トレーサー法を用い、インキュベーション区と圃場無窒素区とも地力窒素の出方とその有機化、脱窒等への移行量ならびに水稲窒素吸収量予測法について検討した。1)開放、密栓インキュベーション、圃場無窒素区と地力窒素の出方はは同じようであった。このため、インキュベーション法でも圃場における地力窒素の出方の簡易測定が可能になった。1週間当たりの無機化窒素は移植期の6月下旬で1.0~1.4gであったが、7月初旬1.7~2.1g、下旬2.1~2.3gと増加し、それ以後は8月中旬1.3~1.6g、9月中旬0.9~1.1g/m^2と減少していった。2)土壌無機化窒素からの有機化、脱窒などへの移行は圃場無窒素区とインキュベーションで大きく異なっていた。移行量は圃場無窒素区で多く、ついで密栓インキュベーション区、開放インキュベーション区の順であった。密栓インキュベーション区での有機化量は開放インキュベーション区でのそれよりかなり多かった。脱窒量は圃場無窒素区で一番多く、ついで開放インキュベーション区、密栓インキュベーション区の順であった。密栓インキュベーション区は密栓直後にわずかにあるのみであった。3)圃場無窒素区における窒素吸収量簡易予測式は、[numerical formula]である。ただし、α=0.5(幼穂形成期直後まで)、1(幼穂形成期直後~出穂期)、0(登熟期)である。また、β、γはβ=0.24、γ=0.40(分けつ盛期~出穂期を除く期間)、β=0.31、γ=0.45(分けつ盛期~出穂期)である。N_<j0>はT_j期間のスタート時における現存NH_4-N、p_<j0n>は同じくスタート時適用トレーサーNH_4-^<15>Nの終時における水稲吸収割合、M_<jn>はT_j期間における無機化窒素量、^<15>R=√<(^<15>N_<jn>/^<15>N_<j0>)(^<15>N_<j+1n>/^<15>N_<j+10>)>であり、^<15>N_<j0>, ^<15>N_<jn>はトレーサーNH_4-^<15>NのT_j期間のスタート時および終時における値である。各N_<j0>, ^<15>N_<jn>/^<15>N_<j0>およびP_<j0n>の3~6点の実測値からT_j期間の各推定値を求め、これと水稲抜取株より求めた窒素吸収量と比較したところかなりよく適合していた。4)圃場施肥窒素区における窒素吸収量簡易予測式は無窒素区のそれが基本になり、基肥窒素のみの区に追肥窒素が独立して加わってくる内容になり次式で表わせよう。[numerical formual]ただし、{ }内は基肥窒素のみの区より求められる。N_<j0>のなかには基肥窒素が含まれる。M_<jn>のなかには幼穂形成期ごろまで基肥由来窒素の再無機化量が含まれる。N_<tj0>は追肥窒素施用量である。αは土壌吸着NH_4-Nの土壌溶液容存NH_4-Nに対する水稲吸収割合の比であり、今後検討されよう。
- 社団法人日本土壌肥料学会の論文
- 1988-12-05
著者
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