細粒質グライ土水田における堆肥および稲わら春施用が施肥 NH_4-Nの動態に与える影響
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概要
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細粒質グライ土水田における堆肥および稲わら春施用が,移植期,分けつ盛期および幼穂形成期の各時期に表層施肥されたNH_4-Nの固定化,脱窒,水稲による吸収について検討した結果は次のとおりであった。1)施肥NH_4-Nの水田土壌中での固定化割合は有機物無施用区および堆肥施用1kg区と堆肥施用2kg区では移植期追肥窒素>分けつ盛期追肥窒素≒幼穂形成期追肥窒素の順であったが,堆肥施用3kg区および稲わら施用の各区では移植期追肥窒素>分けつ盛期追肥窒素>幼穂形成期追肥窒素の順であった。施用時期を同じくした施肥NH_4-Nの固定化割合について,各堆肥施用区は有機物無施用区のそれとそれほど相違がなかったが,稲わら施用区は稲わら施用量の増加とともに大きくなっていった。とくに,移植期追肥窒素の固定化割合は稲わら施用区で大きく,稲わら施用1.2〜1.8kg区で72〜78%にも達していた。2)施肥NH_4-Nの水稲による吸収割合は移植期追肥窒素,分けつ盛期追肥窒素,幼穂形成期追肥窒素と水稲の窒素吸収能力が大きくなるにつれて高くなっていた。堆肥施用区の吸収割合は移植期追肥窒素では有機物無施用区>堆肥施用1kg区>堆肥施用2kg区>堆肥施用3kg区の順であったが,分けつ盛期追肥窒素ではこれらの差はほとんどなくなり,幼穂形成期追肥窒素では各区とも同じようになった。これに対して,稲わら施用区の吸収割合は各期の施肥NH_4-Nとも,有機物無施用区>稲わら施用0.6kg区>稲わら施用1.2kg区>稲わら施用1.8kg区の順であった。稲わら施用区の吸収割合は堆肥施用区のそれに比べてかなり小さかった。3)施肥NH_4-Nの水田土壌中での脱窒割合は堆肥施用区では各区とも各施肥時期でそれほど相違がなかったが,稲わら施用区では移植期追肥窒素は有機物無施用区>稲わら施用0.6kg区>稲わら施用1.2kg区>稲わら施用1.8kg区の順であった。分けつ盛期追肥窒素では稲わら多量施用区のその値が大きくなり,幼穂形成期追肥窒素の脱窒割合は稲わら施用1.8kg区が他の区のそれの2倍以上になり,移植期追肥窒素とは反対に,稲わら施用1.8kg区>稲わら施用1.2kg区>稲わら施用0.6kg区>有機物無施用区の順であった。4)稲わら窒素の水田土壌中における固定化割合はいずれも15%前後と低い値であった。稲わら窒素の水稲による吸収割合は小さく,作期中のそれは稲わら施用0.6kg区で3.9%,稲わら施用1.2kg区1.8%,稲わら施用1.8kg区で0.7%であった。脱窒割合はおよそ85%と非常に高い値であった。5)稲わら施用1年後の稲わら由来窒素の水稲による吸収割合は1%前後であった。これらは前年残存量の6〜10%程度であった。
- 社団法人日本土壌肥料学会の論文
- 1986-08-05
著者
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