生物的窒素固定に関する稲わらの有機成分 : モデル実験

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湛水土壌に稲わらを表面施用すると、フォトトローフの窒素固定活性が著しく促進される原因の一端を明らかにするために、2種類の実験を行った。第1の実験ではWAKSMAN近似分析法に準じて3種類の処理稲わら(脂質除去稲わら、水溶性多糖類除去稲わら、ヘミセルロース除去稲わら)を調製し、これらのそれぞれを土壌に加え、湛水保温静置した。第2の実験では稲わら構成成分のモデル物質(グルコース、キシラン、セルロース、リグニン)を土壌に加え、湛水保温静置した。得られた結果は次のようである。1)各成分を除去した稲わらが土壌のフォトトローフの窒素固定活性を促進する効果は以下の順に低下した。未処理稲わら>脂質除去稲わら>水溶性多糖類除去稲わら≫ヘミセルロース除去稲わら>無添加。2)稲わら構成成分のモデル物質が土壌のフォトトローフの窒素固定活性を高める効果は以下の順に低下した。ヘミセルロース(キシラン)>_-セルロース≫グルコース>リグニン>無添加。3)各種稲わらを添加した場合には、いずれの区でも光合成細菌とラン藻の増殖が見られた。しかし、稲わら構成成分のモデル物質を添加した場合には、ラン藻の増殖はみられたが、光合成細菌の増殖はみられなかった。このことは光合成細菌の増殖の促進には稲わらの形態が必須なことを示唆していると判断された。4)本実験の結果に基づくと、稲わらの各有機成分が窒素固定活性に寄与する割合は、ヘミセルロースが 48〜53%、セルロースが27〜43%、グルコースが0〜9%、リグニンが1%以下と算出された。
社団法人日本土壌肥料学会の論文
1991-06-05

生物的窒素固定に関する稲わらの有機成分 : モデル実験

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