糸状性緑藻表面に生育する微生物による脱窒現象

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水田いおける脱窒反応の主要な部位が酸下層と還元層の境界に位置していることは現在広く認められている。しかし,水田圃場において,田面水に分布する緑藻に高い脱窒活性を認めた。そこで,田面水中の緑藻の脱窒反応に関与する各種要因の解析を行った。得られた結果を漸くすると,次のとおりである。1)農業研究センター鴻巣試験地に多数生育する糸状性緑藻は体内に硝酸を常時蓄積し,嫌気的条件下で脱窒した。2)ポットに土壌をつめ湛水状態に保ち,緑藻添加の有無,照度,無機態窒素濃度,温度,緑藻の老若の違いなどの要因が脱窒活性(表面水にアセチレンを溶解させ,12時間後表面水に溶存しているN_2Oをガスクロマトグラフで測定)に及ぼす影響を検討した結果,(1)緑藻添加の有無にかかわらずN_2O生成量は低照度条件ほど多かった。したがって顕著な藻類生育の認められない水田においても昼と夜で脱窒量が異なっていると推定された。(2)緑藻添加区では表面水中の無機態窒素濃度が高いほどN_2O生成量が増大したが,無添加区では増大が認められなかった。(3)緑藻添加の有無にかかわらず培養温度の高いほどN_2O生成量は多かった。(4)緑藻の老若によりN_2O生成量は異なり,硝酸添加区では若いほうで,また硝酸無添加区では逆に老化したほうでN_2O生成量が高かった。3)本研究の結果より,追肥時や灌漑水の窒素濃度が高い場合には緑藻による脱窒が無視できないものと推定された。4)これまで緑藻自身が脱窒能を有するとする知見はまったくない。したがって本研究で推定された脱窒活性も,緑藻の表面等に生育する脱窒菌に由来するものと推定された。
1986-08-05

糸状性緑藻表面に生育する微生物による脱窒現象

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