ハツカ大根における細胞壁成分としてのカルシウムの役割
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概要
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4.要約 カルシウム供給量をCaOとして, 0.5,50,500ppmの3段階に変えて水耕栽培したハツカ大根の生育を観察, 経時的に採取し地上部, 地下部にわけて新鮮重, 乾物重, 体内カルシウム含量を測定した。また, 上の栽培で得たハツカ大根の細胞壁を調製し, 細胞壁へのカルシウムの蓄積, 細胞壁組成および各成分へのカルシウムの分布の変動について検討した。1)ハツカ大根は培地カルシウム濃度が高くなるにつれて生育が良好となり, 乾物重が増加した。また欠乏症状は比較的速やかに発現し, CaO, 0.5ppmで栽培開始後3日目に早くも生育が遅れ, 8日目には上位葉に赤褐色の斑点を生じ, その後, 萎縮, わん曲し, 白化, 枯死した。なお, 高濃度による障害は認められず, 逆に栽培期間を通して生育が良好であった。2)体内カルシウム含有率は地上部, 地下部がともに培地カルシウム濃度の応じて増減した。ハツカ大根が正常な生育をするためには地上部に1%(対乾物)以上のカルシウムが必要であることが示された。地下部のカルシウム含有率は地上部の1/2〜1/3であり, 貯蔵根の肥大に伴い経時的に減少した。3)組織中に占める細胞壁の割合に対する培地カルシウム濃度の影響は認められなかった。しかし, 細胞壁内カルシウム含有率は培地カルシウム濃度に左右され, 欠乏区で極端に減少した。4)地上部ではカルシウムの欠乏により, 組織内カルシウムの80%以上が細胞壁に含まれるようになった。そして, 多量にカルシウムを供給した場合には30%とほぼ一定であった。地下部では培地カルシウム濃度であるいは生育時期に関係なく, その値は常に70〜90%であった。5)地上部, 地下部ともに細胞壁構成成分の割合の生育時期によるあるいはカルシウム供給量の違いによる変動は小さく, カルシウム供給量が十分なとき, ペクチン物質の占める割合がやや増加することが認められた。6)細胞壁内でのカルシウムの分布状態は地上部と地下部とでは異なり, 前者では対照区(CaO, 50ppm)および多量区(CaO, 500ppm)においてペクチンフラクションに含まれるカルシウムの割合が経時的に増加し, それぞれ細胞壁内カルシウム中50%, 70%に達した。後者では培地カルシウム濃度による影響は認められず, すべての区において60%がペクチンフラクションにあった。
- 社団法人日本土壌肥料学会の論文
- 1971-10-25
著者
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