登熟期の気温が日本型および印度型稲の稔実におよぼす影響
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概要
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登熟期の気温に対する日本型と印度型の反応の差異を主として米質の点から検討した. 気温は (C) 自然温 (H) 昼30゜夜25゜(M) 昼23゜夜18゜(L) 昼15゜夜12゜の4区とし, 出穂後の各期に (H) と (M) は7日間, (L) は3日間ずつ処理し, 処理の前後は自然状態においた. (H) と(M) では出穂後21日間継続処理した区も設けた. 不稔の発生は, どの品種も開花期の15゜-12゜処理で著しく増加したが, 印度型の3品種は23゜-18゜でも明らかに増加の傾向がみられた. 印度型には日本型より受精に高温を要するものが多いものと考えられる. 発育停止は高温による登熟の促進にともなう登熟初期の各頴果間競合の激化のため弱勢花に多く発生し, また登熟初期の低温によつても増加する. 登熟初期の競合は印度型が日本型より著しく, 印度型は日本型より低温にも弱いとみられるから, 発育停止は一般に印度型に発生が多いと考察される. 死米は発育停止より発生の時期は遅いが, 同じ条件で発生し, 弱勢花に発生しやすいことも同じである. したがつて日本型より印度型に発生が多い. しかし, 死米の発生は各頴果への炭水化物の移行量の問題であるから, 不稔などの発生が著しく, 各頴果への炭水化物の配分が多い場合は死米の発生は少なくなる. 乳白米は開花後7-17日ごろに頴果への炭水化物集積が一時的に抑えられるとき発生する. 高温で成熟が促進されると頴果間の競合が激化し, 弱勢な頴果では一時的に炭水化物の集積が抑えられ乳白米となる. この場合は主として登熟初期の競合であるから, その時期に透明化すべき米の中心部附近が白色不透明になりfig. 3のAやB型が発生する. また登熟初中期の一時的低温 (25゜-l8゜) (15゜-12゜) でも発生する. 登熟中期の低温ではすでに米の中心部は透明化しており, その時に透明化すべき部分が不透明なC型の乳白米となる. 腹白米は品種によつて著しい差があり, トワダ・Bluebonnetにはまれである. 登熟後期に炭水化物の集積が不足しがちな場合に発生が多く, 高温特に21日間処理で発生が増加し, その反面低温処理で減少の傾向を示し特に (23゜-18゜) 21日間処理で激減する. 腹切米の発生も品種の特性とみられ, 金南風のほかはきわめてまれであつた. 背腹径の生長中に一時的に低温 (23゜-18゜) (15゜-12゜) にあうと, 腹径の発育が一部で抑えられるため発生するものと考えられる. 白斑米も金南風のみに発生した. 写真のように米粒の表面の一部が白色斑状を呈するもので, 登熟の中後期に高温のため, その部分への澱粉の蓄積が停止したものとみられるが, 発生機構については不明である. 粒径については米の幅・厚さは処理間に明らかな一定の差は認められないが, 長さはいずれの品種も (23゜-18゜) 21日間処理が最大で登熟初期 (15゜-12゜) 処理が最小を示し, また登熟初期の (30゜-25゜) も長さを減じた. 以上のように登熟に対する適温については日本型, 印度型あるいは品種間に差があるものとみられるが, 温度に対する反応については基本的には差は少ないものと考察される.
- 日本作物学会の論文
- 1969-12-30
著者
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