神経因性疼痛における血液神経関門の役割およびサリドマイドの効果(第486回 大阪歯科学会例会 抄録)
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概要
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血液神経関門(blood-nerve barrier, 以下BNBと略す)は末梢神経の内部環境を維持する機構であり,BNB破綻が神経因性疼痛発症原因の一つとされている.我々は神経因性疼痛モデルのBNB破綻の有無およびその時期の検索を行い,モデルによる違いを検討した.またサリドマイドが,BNB破綻を抑制するかを調べた.実験材料および方法:実験材料は体重170〜200gのSprague-Dawley系雄性ラット200匹を使用した.神経因性疼痛モデルとして,Complete Freund's adjuvant neuritis model(以下,CFAモデルと略す),Hashimotoモデル,坐骨神経切断モデル,chronic constriction nerve injury model(以下,CCIモデルと略す)を用いた.手術前にペントバルビタールの腹腔内麻酔後手術を行い,CFAモデルは左側坐骨神経にオキシセルバンドにcomplete Freund's adjuvant 150μLをしみ込ませたのちに,縫合した.Hashimotoモデルは左側坐骨神経をシリコンチューブで囲い,そのチューブの内側から導管用チューブを通して浸透圧ポンプにより0.029%パクリタキセルを1週間持続投与した.坐骨神経切断モデルは左側坐骨神経を切断し,縫合した. CCIモデルは左側坐骨神経にchromic gut (4-O)で4か所軽く結紮し,縫合した.シャム手術は左側坐骨神経を露出させるのみで,縫合した.手術2時間後,12時間後,24時間後,7日後,14日後,21日後にEvans blue albumin(以下,EBAと略す)を静脈よリ注入しEBAの神経内への拡散状態を蛍光顕微鏡で観察し,BNB破綻の有無を観察した.また,サリドマイドをCCIモデルに投与してBNBの破綻の有無を観察した.サリドマイドは体重あたり0mg/kg,100mg/kg,200mg/kg,300mg/kgになるよう野菜油に溶解し,Feeding tubeで胃内に注入した.投与はそれぞれ手術2時間前,2時間後,12時間後,24時間後に行い,投与開始後18時間目にEBA染色を行い,BNB破綻の有無を検索した.結果および考察:Hashimotoモデルは21日後に,坐骨神経切断モデルでは14日後に, CCIモデルは12時間後にすべてのラットでBNBが破綻した.しかしCFAモデルおよびシャム手術のラットはBNBが破綻しなかった.またCCIモデルヘのサリドマイドによるBNB破綻抑制効果は,投与量を増やすに従い,また投与時期を早期にするに従いみられた.以上より,BNB破綻時期が神経因性疼痛モデルにより違うことから,それぞれ異なる機序によると考えられた.またCCIモデルで,サリドマイドがBNBの破綻抑制効果を示したことから,BNB破綻にはTNF-αが関与していることが示唆された.
- 大阪歯科学会の論文
- 2003-03-25
著者
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