玉山国家公園内のブヌン族の生活と国家公園に対する意識
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概要
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台湾の国家公園制度の問題点を明らかにするため,国家公園制度の矛盾が端的に現れている例として,玉山国家公園区域内に居住しているブヌン族の生活の実態,および彼らの国家公園に対する意識が調査された.その結果,1)ブヌン族は狩猟や焼畑耕作を営む山岳民族であったが,現在は漢民族の経済構造に組み込まれ,土地所有や土地利用の形態,農耕や経済活動など生活のあらゆる面で社会的圧迫を受けていること,2)国家公園が成立する際,事前に村民に周知して意見を聞き取るという手続きがとられなかったこと,3)村民は国家公園の設置目的に理解を示しているものの,目的のうち「野生生物の保護」については,大部分の村民が必要とは思っていないこと,4)国家公園法の諸規制のうち,「火入れ禁止」と「狩猟禁止」についてはほとんどの村民が不要だと思っていること,などが明らかにされた.これらから,村民の生活基盤が強制的に改変されたことと村民に対する国家公園行政の啓蒙の不足とがあいまって,国家公園管理処と村民とは対立的な関係にあることが指摘され,1)狩猟禁止を緩和すること,2)国家公園管理処に住民との交流機構を設置すること,3)農業指導員を国家公園管理処に配置すること,など国家公園制度の改善案が示された.There are a number problems in the relationship between the regulation of park management and restrictions on inhabitant’s rights in natural parks within the zoning system. Formosan aborigines live in national parks but contradictions in the system have adversely influenced their living conditions. Therefore, the aim of this study is to indentify the actual situation of Formosan aborigines and their attitude toward national parks. This is an important index when analyzing the way national park policy should be implemented. The subject of this research is the Bunun tribe-Tonpo village-in Yu-san national park, and research by interview was carried out from July to August in 1994. Summary of the results are as follows. 1)The life of Formosan aborigines in the study area was significantly different to that of Chinese, especially with regard to agriculture and commerce. 2)When the government established Yu-san national park, Formosan aborigines and their opinions were not considered. 3)With regard to the objectives of the National Park Act, many Formosan aborigines approve, but most do not agree with "the conservation of wildlife" clause. 4)There are many Formosan aborigines who oppose prohibition of hunting activities because they encroach on their employment and income. 5)Formosan aborigines lack detailed knowledge of the National Park Act. These results indicate that the above factors continue to promote conflict between the National Park Service and the Bunun, because the Bunun have had to change their lifestyle, and because education provided by the national park administration for Bunun is not adequate. Therefore, the following reforms of national park policy are suggested: 1)ease hunting prohibitions, 2)establish an office to communicate with Formosan aborigines in the National Park Service, 3)appoint agricultural information officers in the National Park Service, etc.1.はじめに 2.玉山国家公園内のブヌン族の生活の現況と背景 2.1.調査方法 2.2.調査結果 2.2.1.調査地の概況 2.2.2.農業生産および農業労働の現況 2.2.3.集落の形成 2.2.4.土地所有 2.2.5.土地利用 2.2.6.採集と狩猟 2.2.7.宗教 2.2.8.国家公園の指定 2.3.考察 2.3.1.氏族組織の崩壊 2.3.2.農耕の変化 2.3.3.国家公園指定の影響 3.国家公園に対する意識 3.1.調査方法 3.2.調査結果 3.2.1.国家公園指定当時の村民の認識 3.2.2.国家公園指定以降の村民の意思表示 3.2.3.国家公園に対する村民の現在の意識 3.2.4.国家公園法の制定目的に対する村民の意識 3.2.5.国家公園法による禁止行為に対する村民の意識 3.2.6.国家公園区域内の建築制限および区域区分に関する村民の認識 3.3.考察 3.3.1.年齢層による意識の違いの背景 3.3.2.国家公園指定準備期における広報 3.3.3.国家公園指定以降の村民の意思表示 3.3.4.国家公園指定後の村民への啓蒙 3.3.5.国家公園管理当局の姿勢 3.3.6.諸規制に対する村民の反応 4.国家公園行政に関する提言 5.おわりに
- 九州大学の論文
著者
-
陳 元陽
九州大学農学部
-
汰木 達郎
九州大学農学部附属演習林
-
薛 孝夫
九州大学農学部附属演習林
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薛 孝夫
九州大学大学院農学研究院森林資源科学部門
-
薛 孝夫
九州大学農学部
-
薛 孝夫
九州大学大学院農学研究院
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薛 孝夫
九州大学
-
薛 孝夫
(i.研究動向)
-
汰木 達郎
九大
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